幸せな夢を断つ話 一 あれほど鮮やかだった世界が、ほんの少し柔らかい色へと変わりつつある。それでも太陽は容赦無く地上を照らしていた。そんな光を反射した、華やかな黄色い花弁が見える。
「一見普通のひまわり畑ですね、綺麗」
小さな少女が呟いた言葉に、隣にいた人物は苦言を呈する。
「校内に、向日葵が咲く場所は、皆無だ。それに、この花の時期は、もう終わっている」
数輪だけなら、花壇で咲いているなら、誰かが種を埋めたのではないかと思うこともできただろう。しかし、二人の視界に映る場所一面に、向日葵は咲いていた。第二グラウンドとテニスコート、そして室内プールが設備されている建物の近く、本来であれは更地である場所に、五メートルはあるであろう大輪の花がたくさん在る。
1933