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    となぎ

    @ToNagi_soa

    お空の炎帝とパージタが好き 他にも色々描く
    ここにあるのは全て私の妄想であり幻覚

    🔑→パー様の身長とジータちゃんの身長

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    となぎ

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    理想道EDの前夜、柄にもなく寂しさを感じてしまうパー様と、それに勘付いて寄り添うジタちゃんの話。健全に一緒に寝ます。
    前半だけですがパー様が弱々しいです。糖度も高め。

    パージタ前提だったらこういう可能性もなくはないんじゃないか?ということで一つ。

    ##小説

    別れの前に小夜曲を 明日、俺はこの艇を降りる。
     長期間使用してきた個室の片付けと荷造りを粗方終え、元々備え付けられていた物と置いていく物だけが残った部屋を見渡していると、背後からこつん、と一度だけ扉を叩く音が聴こえた。
     何かを躊躇っているような控え目なノックに返事はせず、無言のままドアノブに手を掛ける。
     控えめに開いた扉の向こう側にいた、白い寝間着に身を包んだ小柄な訪問者は、こちらに気付くと微笑みながら細い腕に抱えた枕の存在を主張してくる。それは『今日は一緒に寝たい』と珍しくわがままを言ってきた彼女に持ってくるよう言った物だった。
     一つのベッドで共に眠ることは何よりも幸福な時。別れる前日にそれを求めるのは当然と言ってもいいだろう。
     彼女――ジータの場合は、特に。
     言いつけを守ったことを認めるように頷きを返して入室を促せば、小声で「おじゃまします」と言いながら極力音を立てずにするりと脇を通り抜けていく。
     それを横目に静かに扉を閉め、鍵を掛ける。
     重く鈍い金属音が、私的な時間の始まりを告げた。
     
     施錠を終えて振り向くと、殺風景になった室内を見てジータがぽつりと呟く。
    「…だいぶ、物が減ったね」
    「ああ。元より物は多くないがな」
     枕を抱える腕に、微かに力が籠る。
    『主』と『家臣』でもなければ『団長』と『団員』でもない、ただ『恋人同士』として過ごすことを目的としたこの密会も、今日で一度終わりを迎える。
     基本的にその日にあった出来事などの他愛のない話をするだけだが、時折ジータの仕事に手を貸すこともあり、逆に彼女が俺の鎧や剣の手入れに手を貸してくれたこともある。
     例え短くとも、何かと忙しない日々を送る俺達の心に細やかな安らぎを齎す、大切な時間だった。
     だが今夜、齎すものは。
    「団長として言わせて。綺麗に使ってくれて、ありがとう」
     言いつつ見せた笑顔は、切ない。
     持ち前の明るさと無邪気さは何処かに忘れてきたかのようで、思わず目を逸らしてしまう。そんな表情をされては、こちらが辛くなるというのに。
     微かな胸の苦しみに耐えながら、悟られまいとなるべく普段通りの声色で応えた。
    「…一応、借りているのだからな。当然だ」
     恋人として共に過ごしたなんて事のない平穏な日常は、暫くの間やってこないと彼女も理解している。
     だからこそ『一緒に寝たい』と言ってきたのだろう。
     断るという選択肢を選ばなかった……いや、『選べなかった』のは、心の何処かで同じ想いを抱いていたからだ。今日が最後となれば、誰であっても思う所はある。
     しかし、『離れ難い』という想いが消えないからといって共寝を求めるなど、男として情けないにも程がある。故に言わぬまま夜を越そうと決めた時に、このわがままだ。断る方が難しい。
    「たまに掃除しに入ると思うけど…いい?」
    「何を今更。許可など要らん」
    「念のため、だよ」
     見られて嫌なものがあったら大変でしょ? と悪戯っぽく笑う。
     先程までの儚げな姿とは打って変わった表情に、ひとつ溜息を吐く。切り替えが早いのか隠すのが上手いだけなのかは定かではないが、どちらの表情も嘘ではないことは確かだ。
     それに翻弄されてしまう自分にも、少し呆れるものだが。
    「そんなものあるわけないだろう。いいから早くベッドに入れ」
    「ふふ、はーい」
     間伸びした返事をすると持っていた枕を俺の枕の奥に置き、そのまま布団の中へ潜り込む。二度ほど位置を調整した後、丁度良い場所を見つけてか仰向けになり落ち着いた。
     寝る準備が整ったことを確認してから部屋の明かりを消して、窓から差し込む淡い光を頼りに自身もベッドへ向かい、腰を下ろす。
     微かに軋む音を立てながら横になり、上掛けを胸辺りまで被る。後はもう瞼を閉じるだけという状態になった時、ジータが体勢を変え此方を向いた。どうやら、まだ夢の中へ行くつもりはないらしい。
    「少し、話そうよ」
    「……、明日に支障が出ない程度であれば、付き合ってやる」
    「分かってる。…ありがとう」
     向き合うように体勢を変えると、既に十分近いというのに更に距離を詰め擦り寄って甘えてくる。その行動は艇内を自由気ままに歩き回る、かの動物を彷彿とさせ、自然と手を伸ばしてしまう。
     暗闇の中でも輝きを失わない金の髪を数回優しく撫でてやれば、くすくすと笑いながら此方を仰ぎ見る。
    「くすぐったい…」
    「寄ってきたのはお前だろう」
    「そうだけど! 別に触ってほしかったわけじゃ」
    「なら、やめるか」
    「え……や、やめなくて、いい」
     撫でる拍子に一瞬触れた耳は、確かな熱を持っていた。今更何を恥ずかしがっているのか。過去にもこうして髪や頬に触れ、唇を重ねたことは何度もあったというのに。
     それからしばらく無言のまま、しかしどちらかが眠りに落ちることもなく、ただ互いの呼吸音に耳を傾けながら心地良い温もりを分かち合っていた。
     だが、相反するように室内に満ち始めたのは、冷たく物悲しい静寂。その暗い静けさに隠している感情を引き摺り出されてしまいそうで、堪らず目を閉じる。
     いっそのこと、このまま眠りに就ければと思ったのも束の間、身動ぐ気配と共に名を呼ぶ声が聴こえた。
    「ねえ、パーシヴァル」
    「…なんだ」
    「私、やっぱり……」
     沈んだ声色に目を開けば、俺の寝間着を強く握り締めて頭を押し付けてくる小さな恋人。
     顔は窺えないが、行動が全てを物語っていた。
     離れるのが、寂しいのだと。
     そのような弱音を口にすることこそ滅多に無いが、行動で示してくることは何度もあった。気を落としている時、傍に居てほしい時、甘えたい時。他の団員よりも長く同じ時を過ごしてきた俺だからこそ解る、かつ俺にしかしてこないジータの感情表現を愛おしいと思わない日は無かった。現に、今も。
     示してきた寂しさを受け止めるようにそっと片腕で抱き締めると、小さな声で少しずつ胸の内を語っていく。
    「大好きな人が明日から傍にいないんだって考えると、やっぱり寂しい。……でもね、私はパーシヴァルを応援したいし、家族を大切にしてほしいって思うんだ」
     握り締めていた寝間着と押し付けていた頭を離して顔を上げ、続ける。
    「だから、行ってきて。私はここで待ってるから」
    「ジータ……」
    「大丈夫、あの時みたいに泣いたりしない」
    「ふ、頼もしくなったものだな」
     ――忘れもしない、あの時の出来事。
     とある密会の日に、寂しさを心の奥に抑圧し続けたジータが限界を迎え『ひとりにしないで』と言ってきたことがあった。
     泣き顔を見られまいと必死に顔を逸らし強がるも、涙は止まることを知らずに頬を伝い、拭いきれなかった雫が一粒、また一粒と床へ落ちてゆく。そんな姿を目の当たりにした俺は、抱え込んだ感情を吐き出させるために抱き寄せて、言葉でもそれを促すと彼女は堰を切ったように一頻り泣いた。
     しかし、あの小さくて弱々しい彼女はもういない。
     不安の色を少しも感じさせない声に、予想以上に強く成長していたことを実感し誇らしく思う。比べて、俺は。
     二十八にもなった男が恋人と離れることに寂しさを抱き、隠すことに必死になるなど。
     己の情けなさを痛感していると、温かなものが頬に触れる感覚と共に、穏やかに語り掛けられる。
    「パーシヴァルも、寂しいんだよね?」
    「……何を言って」
    「私が気付いてないとでも思ったの? 甘く見ないでよね。これでも団員のことはちゃんと見てるつもりだよ」
     強い口調で迫りながらも優しく頬を撫でてくる指は、同時に俺の心にも触れようとしているかに思えた。
     見栄を張るのは、失望されたくない、呆れられたくないという臆病な心の表れ。強がりとも言えよう。
     この行動は見苦しい事この上なく、己に対しての苛立ちが募るだけだと分かっていた。それでも、表に出したくはなかった。知らなくていいと思っていたから。
     幾つもの感情が入り混じり矛盾すら孕んだ心を見透かし、理解した上で寄り添おうとする姿は、まるで――
     思わず重ねてしまった『あの姿』を、そっと瞼の裏に仕舞うように目を閉じる。
     
     始めから、解っていた。
     彼女はこの程度で人を見限るような人間ではないと。
     
    「……いつから気付いていた」
    「一緒に寝ていいか聞く少し前ぐらいから、かな。みんなは気付いてなかったみたいだけど、いつもより少しだけ暗い顔してたよ」
     それを聞いて、思わず苦笑してしまった。平静を保っていたつもりだったが、まさか顔に出ていたとは。つくづく自分に嫌気が差す。
     ここまで言われては、もう。
    「は…お前には敵わんな」
     頬に添えられた小さな手を右手でそっと包み込み、覚悟は決まっているとでも言うようにこちらを見詰める瞳に、隠していた想いを静かに告げた。
    「情けない限りだが、その通りだ。自らこの道を選んでおきながら、離れ難いと思っている」
    「…そっか。お揃いだね、私たち」
     ふふ、とどこか嬉しそうに笑うと、ジータは親指で再び俺の頬をゆっくりと撫でる。自覚があるかは定かではないが、慈しんでいるように感じられた。
     雁字搦めになった感情は少しずつ解かれ、露わになった本心を共有した今、胸に生まれるのは小さな灯火。小さくとも確かに広がる温もりはとても心地良く、張り詰めていた気すらも緩ませていく。
     ――今日という夜をお前と共に過ごすことは、必然だったのかもしれない。
     そう思いながら握る手の力を強めると、ふと指が止まる。次いで、いつになく優しい声が。
    「いいんだよ、弱音吐いたって。私が受け止めてみせるから」
     パーシヴァルだって受け止めてくれたでしょ? と続けながら見せたその表情に、ゆらり、灯火が大きく揺れる。
     光源の無い部屋の中では、はっきりと顔を見ることは叶わないものの。
     団員に向けるものでもなく、彼女にとって大切な存在であるビィやルリアに向けるものとも違う、『俺だけに』向けられる慈愛の籠った柔らかい微笑みを、見逃さなかった。
     それは胸を甘く締め付けて、微かに芽生えていた思いを引き出した。
    「……ジータ」
     ――少しだけ、甘えてもいいだろうか。
     柄にもない我儘を、どうか許してほしい。
     そう願いながら掌に擦り寄り、軽く口付けを落とした。
    「手を、繋ぎたい」
     いいか、と許しを請うと、迷うことなく右手が差し出される。口の代わりに真っ直ぐにこちらを射抜く瞳が返事をした。
     最早言葉など必要ないだろう、と。
     ふ、と思わず笑みを零すと、釣られて彼女も笑う。
     差し出された手に己の手を重ね、繊細で華奢な指を撫で、じゃれつくように絡め合い、大切に包み込む。
     滅多にしない繋ぎ方に些か驚いたのか、ぎこちなく握り返してくる指先は少し冷たい。しかしそう感じたのも束の間だった。
     引き寄せられるようにそっと額を合わせ、目も口も閉ざし、静かに互いの体温を確かめ合う。
     弱い俺を笑わず否定もせずに受け止めて、寄り添った。これもひとつの『愛』と言えるだろう。
     言葉ではなく行動で示されたそれを噛み締めながら深呼吸を続け、溶け合う温もりに微睡んだ。強い睡魔を誘うほどではないが、安らぎを覚えるのは確かだった。
     そんな時、甲を爪で軽くつつかれる感覚に瞼を持ち上げると、何か言いたげな瞳と視線が絡む。
    「どうした?」
    「あ……その。アグロヴァルさんや他の人の前ではいつも通り、堂々としてほしいなって、思って。ほら、王様に近い立場になるんだから…」
     もだもだと躊躇いがちに言うや否や、視線を泳がせる。
     つまり、自分以外には見せるな、と言いたいのだろうが。
    「……く、はははっ」
    「な、なんで笑うの!?」
    「いや、回りくどいと思ってな」
    「~~っ! どこかの誰かさんに似たのかもしれませんねっ!」
     言い捨てながら寝返りを打ち、そのまま寝入ろうとする。分かり易い照れ隠しだ。
     少しでも俺の何かを独占したいのだろうが、とうに叶っていることに気付いていないとは、鋭いようで鈍い。
     喉奥で声を殺すように笑っていると顔で不服を訴えてくるが、暗闇に阻まれて然程効果は無い。それを察してか、直ぐに睨むのをやめた。
     機嫌を損ねてしまった詫びとして、繋いだままの彼女の手の甲に口付けし、彼女の望む言葉を贈る。
    「――このような姿や弱音を曝け出せるのは、お前だけだ。兄上のみならずウェールズの民達にも、見せられる訳がなかろう」
     嘘偽りないことを、極めて穏やかな声色に乗せて。
     少しの間を置いて再び寝返りを打ってきたジータは、満足そうに、それでいてどこか照れくさそうな笑顔を向けてきた。裏表のない表情に、こちらも自然と口許が緩む。
     夜がもたらす暗闇と静寂は、寂しさや恐怖といった負の感情を強くするもの。
     だが今この部屋に満ちているのは、平穏という名の細やかでありふれた幸福。冷たさや物悲しさなど、かけらも無い。
     抱えていたものを見抜き、心に掛かった霞も晴らした琥珀をじっと見詰め、改めて覚悟を口にした。
    「如何なる困難が待ち受けていようとも、理想の礎を築くために必ず乗り越えてみせる。そしてお前が居るこの艇に戻り、空の果てを目指す旅を見届けよう」
    「うん、パーシヴァルなら出来るって信じてるよ。……だから、イスタルシアでお父さんに会うその時は、パーシヴァルも一緒に」
    「勿論。そうでなければ意味がない」
     願うように力が込められた手を握り返し、その想いを受け取った。
     果てしなく大きな夢を掴むため、何があっても下ろすことなく真っ直ぐに伸ばし続ける小さな手。薄らと残る幾つかの傷跡は、彼女の努力と壮絶な戦いに身を置いていたことを物語る。
     いつだったか、この手が好ましいと伝えたことがあった。
     はにかみながらも「綺麗じゃない」だの「女の子らしくない」だのと否定的な言葉を返してきたが、俺が見ているのは外見ではない。
     様々な武器の練度を上げるために鍛練を積み重ね、長い旅路の最中に出会った仲間と共に多くの困難を乗り越え、数えきれぬ程の人や星晶獣を助け守ってきた証を卑下してはならない。
     恥じるのではなく誇りに思え、と言えば、少し驚きつつも素直に受け入れた。
     思えば一度殴られたこともあった。それが遠い昔のように思えるほど、今日に至るまであまりにも多くの出来事が起きたものだ。
     そんなことを考えている間に、当の本人は睡魔に襲われているようで、突然口を閉ざしたこちらを欠伸をしつつ伺っていた。
    「眠いのなら寝ろ。俺に合わせるな」
    「うぅん…でも…」
    「なんだ? まだ何かあるのか」
    「朝起きたら、いなくなってたり、しない…?」
     夢と現の狭間で何を思ったか、突拍子もないことを言い出し思わず瞠目した。何も言わずにいなくなる訳がなかろうに。
     だが、ふと考えてしまった。彼女の父親は、そうして姿を消したのだろうか、と。
     ……いや、今考えるべきは、目の前で繰り広げられている睡魔との戦いを終わらせてやることだ。夜更かしをさせてしまった責任も取らなければならない。
     微かに滲ませた不安を、取り除いた上で。
    「何を言うか。朝まで傍にいるに決まっているだろう。分かったなら目を閉じろ」
    「ん…。おやすみ、パーシヴァル……」
    「ああ、おやすみ」
     最後に就寝の挨拶を交わすと、安心したような表情を浮かべながら深い眠りへと沈んでいった。
     ひとつ歳を重ねても、寝顔は変わらずあどけないものだ。あの時――アグロヴァル兄上と幽世の鍵の一件の後に見た寝顔と、全く同じ。
     眠りに落ちたことで力が抜けた手を静かに離し、そっと頬に添える。いつか大輪の花を咲かせるであろうジータの成長を手助けしてやることも、肩を並べることもしばしの間出来なくなるのは、やはり惜しい。だが俺は自らこの道を選び、彼女も『行ってこい』と背を押した。ここで立ち止まることは到底許されない。
     穏やかな寝息を立てるジータの頬を撫でながら、静かに口許を耳に近付ける。
     弱さを受け止め寄り添ってくれたことへの感謝を。
     遠く離れても、決して揺らがぬ誓いを。
     それら全てを乗せて、囁いた。
    「……愛している、ジータ」
     微かに身動いだ気配がしたものの、変わらずゆっくりと、規則正しい呼吸を繰り返していた。薄らと微笑んでいるようにも見える寝顔を眺めながら上掛けを掛け直し、己も温かい微睡に身を任せる。
     それぞれの夢を追い、叶えるために別の道を行く。どんなに険しくても諦めないという強固たる意志と、互いを想う心を持って。
     例え孤独を感じる時があろうと、それすらも糧にして俺は理想へと続く道を歩み続けよう。
     そして再び道が交わり、約束を果たしたその時は。
     
     向日葵のような笑顔で、迎えてほしい。



    *最後のオーバチュア
     
     朝を告げるように小鳥は囀り、部屋を照らす日は眩しい。
     予定よりも早く目が覚めてしまったものだから、未だ穏やかに眠る恋人の寝顔を眺めていた。
     そっと頬に触れて、優しく撫でてみる。すると、言葉にならない声と共に身動いだ後、ゆっくりと瞼を持ち上げて朝日の眩しさに目を細めた。
     起こすつもりはなかったが、起きてしまったなら仕方ない。
     毎日交わしていたこの挨拶を、次に交わす日はいつだろうか。遠いとも近いとも知れない。
     けれど、その日は必ず来るということだけは分かっている。
     それだけでいい。それだけで、踏み出せる。信じているから、離れられる。
     一日の始まりに最後の挨拶を、当たり前で特別な言葉を。
     眠気の残る目で此方を見る恋人に微笑みかけて、告げる。
     
    「おはよう。」
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