Line of sight「━━━…っ!」
アイツと目が合った瞬間、急に恥ずかしいという感情が込み上げた。女として、首に大きな傷があるなんてみすぼらしいよな…と、ふとそんな考えが頭をよぎる。そう思ったら、普段なら気にしない筈のその部分を咄嗟に手で覆ってしまった。
「…あんまジロジロ見んじゃねぇよ…。」
見られている。…と意識した瞬間、いたたまれない気持ちが込み上げて、ポツリ…とそんな言葉を口走る。微妙な空気が漂っているのを感じてしまった。
そんな黒曜の考えを他所に、目が合った瞬間に赤面しながら首筋に手を当てる彼女を目の当たりにした晶。普段なら絶対見ることの出来ないその表情に可愛いと思いながら、こんな表情が見られるのも、恋人という関係になったからこその特権だよなと優越感に浸る。
中々見ることの出来ないその顔をまじまじと見ていると…急に、見てんじゃねぇよって言われてしまう。その時、手を当てている部分をやけに気にしている事に気づいた。
(そういえばコイツ…首筋にでっけぇ傷あるもんな…)
最初に会った時は、確かに首筋に大きな傷を付けていることに驚いた。だが、付き合いが長くなるに連れて、首筋の傷に対して特に何も思わなくなっていた。だから、いまさら傷のこと気にするとかめっちゃ可愛い~♡と茶化したくなったが、明らかに殴られることがわかっているから敢えて言うのを止めた。その代わりに…
「オレは全然気にしてねぇけど?」
そう言いながら、隠している首筋に軽く口付けをした。
思ってもいなかったであろう行動に、自分だけ気にしていたのが馬鹿みたい…と言いたげな顔で余計に赤面する彼女を見ながら、更に愛おしさを感じるのであった。