「はー、お腹いーっぱい!」
「だな。私も少し食べすぎたかもしれない……」
歩きながらリリーとルカが口々に満腹を示す。それを後ろから眺めて、十一とナワーブは顔を見合せて笑う。先ほどの若い二人の食べっぷりは素晴らしかった。少々懐には痛い出費になったが、それは今後の活躍で返すと宣言された。そんな眩しい姿も含めて、奢った甲斐があったというものだ。
何を隠そう、今日は新生した戦隊の決起会と称した食事会だった。ささやかなものではあったが、時間を取ってメンバーで集まったことで、この四人でこれから競技シーンで戦っていくのだと改めて確認することができた。身が引き締まる思いもありつつ、リラックスした空気の中で会が進んだことも大きな成果と言える。これなら親睦を深めるという目的も達することができただろう。せっかくの機会と出会いだ。ゲーム中のチームワークという観点でも、もちろんそれを抜いても、仲を深めるのは大切だろう。
歩みが交差点に差し掛かった頃、ルカが他のメンバーに声をかけた。
「すまない、今日は寄るところがあるから私はここで」
「わかった」
「またねールカ!」
大きく手を振って見送るリリーに、ルカは手を振り返して歩いていった。その後ろ姿を見て、十一はそっと笑う。
「あの様子、今日はきっと“先生”のところね」
「先生って?」
リリーが不思議そうに尋ねると、十一の代わりにナワーブが口を開いた。
「ルカの科学の先生、らしい。昔からの付き合いなんだと」
「へー! 仲良いんだね」
度々ルカがその“先生”のことを意図せず話題に出していたのだろう。何せまだルカとの付き合いが長くはない二人が、会ったことがない相手を知っているほどだ。