ハインラインの初めの印象は、よく分からないなんかおかしな人、だった。
外見は人を寄せ付けない綺麗な人形のように整っていて、しかしそれがひとたび口を開いて話し始めると、すごい早口でこちらが理解できていないことでもお構いなしに捲し立ててくる。
対人関係における距離感や気づかいみたいなものも、知らないのか敢えて省いているのか、その勢いにただただ圧倒されて、正直引いていた。
ただ熱意というかそういうものだけは伝わってきて、言っていることはよく分からないけれどその熱意自体はすごいと思っていた。
初めは頭がいい人間の考えることはよく分からないと苦手に思っていたが、少しずつ交流が進むと、見え方が変わってきた。
自分の知的好奇心の赴くままに振る舞う姿は自分の気持ちに素直なんだろうなとか。根を詰めて仕事に邁進するのは好きなことでもあるからかもしれないが、自分の仕事に真剣に取り組んでいるんだろうなとか。
他人に妥協を許さず部下に対して厳しいのも、自分の仕事に誇りをもって全うしようとするプロフェッショナルとしての姿勢なのかもしれない、とか。
ノイマンも決して手を抜いたりだとかいいかげんにやってきてはいないが、誇りを胸に掲げているかと問われたら、流されてここまでやってきたと自分では思っているから首を傾げるだろう。
やらなければ死ぬかもしれないからやってきただけだと思っているノイマンからすると、そういう風に見え方が変わったハインラインに興味がわいたし、好感が持てた。
興味と好感を持って接していると、今までよりも交流が楽しくなってくる。あくまでノイマンの想像でしかなかったハインライン像が、段々と色づいていく。
好ましいと感じていたものが、ハインラインの真っ直ぐな姿勢に惹かれて眩しく感じる頃には好意に変化していた。まだはっきりとした欲を持つほどの強い好意ではないが、ハインラインとの交流を絶つつもりはないので恐らく育っていくだろう。
ハインラインとの交流は楽しいし、多忙なハインラインがノイマンと交流するために時間を作ってくれているのに、会わない手はないなと思っている。
そう考えると気付いていなかっただけで、交流を絶つつもりがない時点で好きな人に会えるなら会いたい欲を持っていることになる。
まだそんなに育っていないと思っていたが、ずいぶんと育ってしまっていたようだ。