クダリには毎朝のルーティン--というよりかは習性と言った方が良いかもしれない--が存在する。
それは目覚まし時計を止めて、遮光カーテンを開け、隣で涎を垂らしながら幸せそうな顔で寝ている片割れを起こすことだ。
側頭部がガンガンと痛むけたたましい騒音にも気付かずに、ぷぅぷぅと鼻息を鳴らしているノボリ。そんか平和そうな寝顔を見て、このまま寝かせておきたい気持ちもあるのだが、生憎今日は出勤日。寝坊したのでは、サブウェイマスターとしての面子が保てない。
「あのね、朝だよ、ノボリ」
首元まで掛かっていた毛布を剥ぎ取り、無理やり上半身を起こさせる。それでもまだ目を覚まさない強情な兄。しかしクダリはお構いなしに寝巻きの上半分を、半ば無理やりに脱がせ始めた。
「ノボリ、いつもボクにお小言言うけど、朝はノボリの方が往生際悪い」
「……しょれは、お前がわるいからでしょう……」
肋骨が浮いた胸やあまりにも薄い腹が露出したところで、ノボリがようやく閉じていた目を開ける。
寝巻きがなくなったことで白日の元に晒された至る所に残る鬱血痕や、ぷっくりと腫れた乳首は朝に見るには目に毒だった。
「何だ、起きたんだ。じゃ、あとは自分で出来る?」
クダリが意地悪く聞くと、ノボリはむすっと片頬を膨らませる。
「わたしの朝の準備は、お前がする約束でしょう」
当たり前かのように片手を伸ばして、その手を取るように無言で訴える。
全てを分かっているクダリは伸ばされた手を取り、甲に軽い口付けを落とした。
「本当にわがままなんだから、ボクのお姫さまは」