青龍の苦悩―――月明かり、自室の窓にもたれかかっている一人の少年。見た目は少年だが、実際は軽く500年は生きており、四神の一柱、「青龍」剣持刀也である。
そんな彼は、まるで誰かにアピールでもするかのようにぐでっと普段めったに崩れない姿勢を崩して恨めしいくらいに光り輝く月を眺めている。毎度毎度しっかり仕事をこなしている月の女神に罪はない。
しばらくそうした後、ふいに彼の口が動いた。
「.....はあ〜〜〜〜〜〜。」
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気づくとそんなため息が出ていた。ああ、疲れているんだと自覚するとともに襲ってくる眠気と疲労。今だけは自分にいつもの10倍の重力がかかっているのではないかと疲れであまり動かない頭でぼんやりと考えていた。
今日は収穫祭。美味しい食べ物がたくさん食べられるのは大変望ましいことだが、どうしてもその中には自分の保護下にあるのにも関わらず恩恵を感じていないのか悪行を企むやつは少なからずいるわけで。本来なら献上された飲食物をおいしく食べて、歌って踊ってどんちゃん騒ぎ、そしていい感じに収拾つけてはい解散。そのはずなのだが、今年もまた当たり前のように食べ物を盗むだの人身売買だの厄介事が起きてしまった。
食べ物を盗む程度ならまだいいのだ。まだ可愛いものだと思うし、多少なら全然構わない。どうせ自身が1日で食べ切れるような量じゃないのだ。作ってもらってすぐ食べないというのも失礼に当たるので、それはいい。
だが、人身売買は看過できない。まさか自分が統治している領地でそんなことが起きていることを信じたくなかった。しかもロリが主に取り扱われているとなれば、僕の逆鱗に触れないわけがなく。
少々叩きのめす程度で済んだが、恐らく残党などいくらでもいる。その調査のせいで今日はほとんど食事をすることができなかった。
....その食事は誰が食べたのか?...まあ、それは優秀な相方ややたら発言がイケメンな桃色の彼女や半ロリかもしれない白茶色の彼女らによって見事に消えていった。くそう、僕の分くらい残してくれてもいいだろうに。
まあそれを悔やんだとてどうしようもない。今は人身売買に関してを調べなければならないのだ。
だが、疲労で疲れ切った頭にはそんなことを考える余裕など残されてるわけもなく。
「......今日は寝よう。」
そう言ってのっそりと窓から離れて、近くにあるベッドに横たわる。
明日の予定を考えている暇もなく、すぐに意識は虚空へと落ちていった。
「刀也さ〜〜ん!起きてください!もう昼になりますよ〜!そんなに食べれなかったことで拗ねてるんですかぁ〜?俺が作るっスから元気だしてくださいよぉ!」
「ん”ん”ん”...うるせえ...僕はそんなこともう気にしてねえ....ただ、疲れた。そうだな、疲れたんだ。」
「そんな某アニメキャラみたいなこと言わないで、とりあえず起きません?なんか朱雀さんとか白虎さんとかあと一人来てますよ!」
「んふwwあと一人ねw」
「うははwそうですそうですwだから早く!」
相変わらず優秀な相方だ。昨日の事を知っているであろう彼は、この時間になるまで僕を起こさず待っててくれたのだろう。さすがに、客人には僕が寝ているなんて理由は通らなかったみたいだが。
そう寝起き特有の謎の脳内ナレーションを流しつつ、僕はゆっくりと着替えをしていた。彼らなら少しくらい待たせてしまっても許してくれるだろうと思い。
―その瞬間。いつの間にか閉めていた窓の外からなにか変な衝突音が響いた。
音の正体は分かりきっている。そして多分数秒後に―
「もちさぁん!おはようざいやぁす!」
そう言いながら窓を外側には取っ手がないのに開け放つ男の正体は、
剣持と同じく四神の一柱、「朱雀」不破湊だ。
「....ふわっち。普通に入ってくれないって前言ったよね僕。屋根ちょっと壊れてるよね。」
そう言って不機嫌そうな態度を見せると不破はにんまりと笑い
「にゃはは。いや〜覚えてはいたんすけど、こっちの方が楽なんで。」
「じゃあ承認すんなよ.....その時に文句言えばよかったでしょ。」
「いや〜そしたらもちさん起こるでしょ。」
「当たり前だ。」
イマイチ思考が掴めない彼の行動は相変わらず訳もわからない。
もう慣れてしまっているので、対してなんとも思わない。重症かもしれない。
続きはまた後で書きます!!!