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    6310地元祭り行って浮かんだ幻覚小説
    (05は、お手伝いに駆り出されてる設定)

    6310======================
     今日はこの沿線地域をあげてのお祭りがある日。
     電車が定刻どおり到着し、洋服を着た人の中に、浴衣姿が目立つ人だかりが改札を抜けていく。この駅には目玉のよさこい演舞のステージ会場が1つ。隣駅が打ち上げ会場の花火大会中も、演舞が行われるのだから、きっと演舞を見に来た人達がこの人だかりに何人もいるのだろう。浴衣を着た人も、そうじゃない人も。
     そうぼんやり思いながら、改札を抜けてステージ会場があるJR武蔵野線方面に向かう人たちを眺めていると、1人の男が、俺と目が合った瞬間片手を頭上に上げてひらひらとさせた。

    「よう、越生〜お疲れ。東上は?」

    「東上は朝霞の方行ってる。武蔵野、なにかあったのか?」

    「まぁ、そんなとこ〜」

     武蔵野が俺の何気ない問いに答えながら、ペンギンがいるICカードをタッチして、改札を通る。

    「越生〜、あとで屋台でなんか食おーぜ、俺が奢るから、東上と3人で」

     俺が反応する暇もなく、そいつはホームに向かって階段の方を歩いていく乗客の、まばらな波の中に入っていく。人の間を縫ってあっという間に階段を下っていったようで、すぐ武蔵野は見えなくなった。

    「ちょっ、おまっ…どこいくんだよ!業務は…!」




     
    「とーじょー」
     花火大会が始まるまで30分を切った頃。どっと人が流れ込む改札口で乗客の誘導をしていると、より一層密度を増した人の波の中から聞き慣れた声がした。と思ったのもつかの間、腕をぐいっと引っ張られる。何も状況が掴めないまま、波の中の一部になった。自分を呼び、この波の中に引きずり込んだ奴の正体の背中がすぐ目の前にきて、とにかくそいつを見失わないように、掴まれた手が離れていかないように、人の流れに合わせながら、後ろにくっついて歩く。

    「東上、はぐれんなよ」

    「武蔵野!」

     武蔵野は、俺の腕を掴み引っ張ったまま人混みの中を歩く。
     駅前ロータリーは、通行規制でロータリーを抜けるまでの道が決まっていて、人の多さも相まり、お祭り会場に向かう人の声、誘導する警備員の声がひしめき合う。武蔵野は、俺の呼びかけには応じず、ただ人の流れに沿って進んでいく。目の前には汗ばんだシャツの背中と、襟足が結ばれて見える首筋がある。顔の側面は辛うじて見えるが、どんな表情なのかはうかがい知れない。混乱、そして腕の痛みを伝えられたのは、ロータリーを抜けて大きな通路に出られた時だった。

    「お前!俺まだ業務中だったんだぞ!突然腕つかんで、なんなんだよ!もーっ、それも思いっきり引っ張りやがって…それに!お前もまた業務ほっぽり出したんじゃないだろうな…!?最近はちょっとはマシになったと思ったのに…」

    「とーじょーごめん、ごめんってぇ…だって俺、東上と花火見たい、って思ったら、居てもたってもいられなくなって」

    「はぁ…?」

    「だって俺たち、開催40回も超えてるのに、1回もちゃんと2人で花火見たことないだろ。朝霞の。」

     武蔵野は俺の腕を掴んだまま、また前に進む。屋台が見えてきて、少し前までよさこい演舞をしていた道路も、神輿が通り終わり、花火をみるであろう人が道を埋めていく。
     武蔵野はどこまでいくのだろう、と思い始めた時、ステージが設営されている公園の中に入っていく。その瞬間、大きくパンッパァンッと音がした。




     目の前の夜空に大きな花がいくつも咲いた瞬間、掴んでいた東上の腕がびくっとはねた。振り返って東上をみると、東上は花火の光に一瞬で夢中になっていたようだった。
     もう少し見えやすいように、と公園の中の方にはいると、人が敷地内を埋め尽くしていた。東上とはぐれないように、腕をひいて、ちょうど少し空いていた端の方に定位置を決める。
     東上は、繰り出される夜空の瞬く花が打ち上げられ、散っていくのをまっすぐにみていた。感嘆を漏らしたり、わっと驚いたり、短い時間に沢山打ち上げられ夜空に舞い、散っていく花火たちの光を一身に受けているようで、花火の音が身体に振動する度、なぜだか不安が大きくなっていっていく。夜空に光が咲いて、散るたびに、その光一つ一つが煙をまき暗闇に吸い込まれていくたびに、東上は、一緒に消えていってしまうんじゃないかと思った。存在を確かめるように右の手のひらを、東上の左手の上にそっと乗せると、東上はびっくりしたように、俺をみた。今度は手のひらで包み込むように、東上の手を握る。その間、東上は、目を伏せるように重なった手をみていた。
     キスがしたい
     そう思ったと同時に、あいている左の手で東上の頬をを包みこんでゆっくりキスをした。手は繋いだまま、東上の柔らかな頬と唇で、今、東上はここにいるのだと感じながら。
     その間も、花火は舞っては散るを繰り返し、花火が開く音は東上の唇や、繋がっている手から伝っているような気がした。
     周りの歓声、ハートだ!とはしゃぐ声、連続で上がる大きな破裂音、1つの花火の段落が終わり、拍手が聞こえる。

     唇を離すと、日焼けで赤くなっていた東上の顔が更に濃くなり、薄く開いた唇からは、ばか、とだけ発せられ、ぷいっとそっぽを向くようにそのまま夜空に顔を向けた。
     また、花火の光が、東上の漆黒の瞳を照らす。艶のある黒髪が花火の光で彩られていく。
     1つ花火の段落が終わると拍手が起こり、少しの夜空の静寂と観客のざわめき、ひゅ~っと音が聞こえたと思ったと同時に、花火が舞い散っていく。
     静寂から花火が上がる瞬間、東上は繋いでいる手をぎゅっと、少し強く握る。そして、魅入っているとどんどん緩んでいくから、そうしたら俺が離れないように、手を少し握る。この散った光が夜空に吸い込まれると同時に連れて行かれないように。

    「武蔵野」

     東上は俺の名前を呼んで、繋いだ手に指を絡めて、俺と東上の手のひらがよりぴったりとくっついた。

    「花火、見に来たかったんだろ、武蔵野ちゃんとみろよ、綺麗だぞ」

     そういいながら、東上は絡めた手を膝の上に持っていく。自然と、俺は東上の方に身体が傾いて、密着して肩が触れ合うようなカタチになった。暑い。熱い。体温も、気温も、東上と触れ合っている場所も。

    「業務中に見える花火もいいけど、これも悪くない」

     お前と見るのも。そういって東上は頬に軽く唇が触れるだけのキスをした。恥ずかしくなったのか、すぐ顔をそらし、離れていこうとする東上の手を離すものかと握る。

    「東上、行こう」

    「はぁ!?どこに…!」

    「人がいないとこ!」

    「今、そんなとこないって!ていうか武蔵野、そんなこと言う前に業務は…っぉい…!」

     花火終了まで、15分を切った。夜空が光に彩られ、火の粉が舞っていく音なんて関係ない。汗で滑らないように、どちらの汗か、体温か分からなくなるくらい東上の手をぎゅっと掴み、花火を見る観客の流れを逆らうように、公園を出て、ただひたすらに2人きりになれる場所を探す。

    「武蔵野!!」

     東上の呼ぶ声で足を止めると、これでもかというほど、夜空に金色の光がとめどなく溢れていた。矢継ぎ早にパンパンとなる音と共に圧倒され、2人で立ち尽くす。
     
    「武蔵野、すごいな」
    「うん」
    「これが、俺達の沿線の祭りで上がる花火なんだな」
    「うん」

     お互いの手の熱を感じる。光が破裂する音の振動も、花火の熱も。東上は、ただ、花火を見上げている。漆黒の瞳の中に、とめどない光を映している。

    「東上」

     堪らなくなってまた唇を合わせた。今度は、深く。東上の瞳の中の火花の星屑に吸い込まれていくように。何度も何度も、唇を合わせ、啄む。フィナーレの花火が、星を降らすように、夜空に消えていった。

    「〜〜〜〜ッ!!!!武蔵野!!!おまっ、外でこんな!ばかっ、ばかばか!!!!」

    「わっ、叩くなって、いてッ…ごめ、ごめん東上…!」

    「帰るぞ!一緒に怒られてやるから」

     そういって今度は東上が、俺の腕をひく。
    ぞろぞろと、花火の観客達が動きだす。綺麗だったね〜とか、すごかった、とそれぞれ花火の感想を言い合い、これから何をするのかを話し合っている。

    「東上、総踊り一緒に踊ろうな。屋台も一緒に食べよ、そんで〜」

    「忙しいんだから、そんなのやってる暇ないだろ」

    「じゃあ、東上ん家でお祭りやろうぜ。かき氷削って、焼きそば作って、材料は俺が買ってくる」

    「なんだよそれ。っていうか家来るつもりなのかよ」

    「越生と3人で、お祭りしよーぜ」

    「そこまで言うなら、しょうがないな」

     そう言って、東上は笑った。



    数日後、業務用の氷とかき氷シロップ、焼きそばに使う中華麺に豚肉玉ねぎ…と両手いっぱいに抱えた武蔵野が東上宅に訪問してきたのはまた別の話。
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