いつからか息子は昔から機械いじりが好きだった。我が家が自転車屋ということもあり環境は十分過ぎるほど整っていたこともあっただろう。おとなしかったあの子は旦那の横にひっつき虫のように着いては作業している姿をずっと見ていた。動かなくなった自転車に命を吹き込むかのように手早く治す旦那の姿を和一はキラキラした目で見ていたのだ。
旦那も自分の仕事に興味を持ってくれている息子が相当嬉しかったのだろう、まんざらでもない様子で、工具の使い方から修理の方法まで喜んで教えていた。大きくなるにつれて、自分自身も自転車を触り、修理を行うようになった。技術は父親負けず劣らずのものだった。その腕が街に広まると自転車以外のものまで我が家には修理に来るようになった。優しいあの子は好意で無償で何でも治すようになった洗濯機冷蔵庫、ベビーカー、バイクなどなど。
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