芥敦どむさぶ背景:Dom/subの概念が普及してない。裏社会の人は、拷問とかにも使えるため割と知ってる。ポートマフィアは、森さん(医師)の影響もあり、知ってる。
敦:Sub。虐げられることが常だったため、サブドロップが当たり前。サブドロップ慣れしすぎて、具合悪いのがデフォ(それが普通だと思ってる)。「褒めてほしい」「尽くしたい」に欲求が偏っているが、自覚無し。な上にそれが相手に求められてないと思ってる。
芥川:Dom。常識はある。命令して言いなりにしようとか、そんな非道なことは考えない。敦の状況に愕然として、優しくしてやりたいと思うのに、どうしても強い言葉が先行する。激情に振り回されがちで、自覚あるため悩んでる。「支配・独占したい」「躾したい」に欲求が偏ってる。
二人の関係:本編の険悪な仲から大分経ち、双黒としてコンビを組むこともしばしば。お互い前ほど嫌ってない。ライバル心はある。
試し書き↓
「ポートマフィアの禍狗…お前がSubだって噂は知ってんだよ!」
「ほう…其の様な下らぬ噂があるとは。」
「虚勢を張れるのも今の内だ!"跪け"!」
「効く訳───」
「っえ……」
視界から白色が消えた。
カクン、と身体から力が抜けるように、地に両脚を着いている。
「な、に…?」
芥川は、驚愕の眼で敦を見た。
敦本人も状況を理解出来ず目を見開いている。
(────人虎が、Sub…!?)
試し書き2↓
「人虎、あれから調子はどうだ。」
「あれからって…敵の命令を受けてから?"コマンド"って言うんだっけ…。別に変わりないよ。」
「………。」(変わりない…か。)
変わりない訳無い。敦はあの時、確実に精神を犯されていた。それが体調に直結するのは容易に想像が着く。
「急で驚いたけど…あの感じ、慣れてるから。」
「…何?」
「前…孤児院に居た頃。よくああなってた。それがコマンドだとは知らなかったけど…、院長先生は知ってたのかもな。」
其れを聞き、芥川は愕然とした。
敦の境遇は知っている。虐待を受けていた事も。其れで死に掛けた事も。
其れにSubとしての性質まで使われて居たのだとしたら、サブドロップは免れない。罵声を浴びせ、暴力を振るう環境だ。アフターケア等する筈もないだろう。
「…本当に、体調に障り無いのか。」
芥川が真に訊くと、敦は首を傾げながら、何の気になしに口を開く。
「あの後───吐いて、気絶したけど。今は別に。」
芥川は顔を覆った。
この様子では、他者に告げていないのだろう。他者が知っていれば、今頃敦は部屋に監禁され手厚く看病されている筈である。
あれから3日しか経っていない。ケアをせず過ごし、其の体調が回復する筈も無い。
敦は────嘘偽りなく、"慣れている"のだ。
「………来い。」
「え?何処行くんだ?」
「…面倒を見てやる。」
「は?…何?」
「五月蝿い。黙って来い。」
試し書き3↓
「"来い"」
凛とした声に従い、1歩手前まで寄る。
「"跪け"」
両膝を床に着く。
「…"善い子だ"。」
髪を梳く様に頭を撫でられる。
「………うーーーん。」
「…何だ、其の唸りは。」
白銀の毛が手から滑り落ちるのを密かに楽しみ乍、腕を組んで眉間に皺を寄せる敦を見下ろす。
敦は3秒程唸ってから、芥川を控え目に見上げた。
「……これ、意味有るか?」
「………」
芥川は顔を覆った。
最早驚きは無い。想定内だが、呆れは有る。
「…体調に変化は。」
「別に。」
すげ無く返されて、思わず脳天を殴りそうになった。芥川は、この行為に葛藤の末望んだ。覚悟を決めて、其の意義を胸に留めて、この行為を行った。
だのに、敦には何一つ響いていない。
独り善がりだと云われた様で、腹の底から湧き上がる怒りを感じた。
「…吐きそうか?」
「否?気持ち悪いとかも無い。」
少なくとも、悪影響を与えている訳では無い様だ。しかし、敦のケアの為には、其れでは意味が無い。
サブドロップから脱け出す為に何が効果的かは、Subによって異なる。故に、敦の好きな事を行うのが最善だが、
「…貴様のしたい事は無いのか。」
「したい事って何?芥川と?こう云う系の事?有ると思うのか?」
これである。芥川は口を噤むしか無い。
抑、芥川と敦にはパートナーとしての信頼が足りない。敦が其れを望まなくては解決しない。敦の信頼無くしては、芥川の行為は全て独善的な物に成り下がって了う。
「………」
かと云って、自分以外の他者に其の役割を譲るのは癇に障る。
3日前、敵が敦を跪かせた時。あの時芥川が感じたのは、紛れも無い"怒り"だった。
自分の領域を侵害されたかの様な、不快さを認めたのだ。
故に、芥川は、敦が望まないとしても、離してやれない。敦を此の儘帰せば、探偵社の者に囲われ、誰かが面倒を見る事になるだろう。其の未来を想像するだけで、芥川の胸中は激しい炎に焼かれる。
「抑、僕とこんな事したくないだろ?」
「…否。」
「無理するなって。僕が傍で跪いたって、芥川に得なんて無いだろ。」
敦は純粋な瞳で訴えてくる。其れを信じて疑わない瞳。自分が求められていないと確信している瞳だ。
…それが、芥川には気に喰わない。
「否。何故そう言い切れる。」
「え、だって、お前僕の事嫌いだし…、僕なんかにされたって、何も無いだろ。」
「何も無いなら、最初からしておらぬ。」
「…え?」
「抑前提が違う…。貴様で無ければ、しておらぬ。」
再度頭を撫でられる。思いの外優しい手付きで触れてくるものだから、言葉と相まって敦は動揺して了う。
「な、んで、」
「…さてな。…一種の防衛本能なのかも知れぬな。」
防衛本能。何で。敦の事で、何故芥川が防衛する必要が有るのか。敦には理解出来ない。然し。
芥川の手から零れ落ちた毛先が、敦の顔を擽る。途端に、無性に恥ずかしくて、体温が上昇するのを感じた。
其れでも手を払わないのが答えである事に、敦は気付けない。
「………存外、是、気持ちいいから…、もっと、して欲しい……。」
「!」
敦からの要望に、芥川は軽く動揺したが、直ぐに気を持ち直し、手を動かし続ける。
髪を梳く度覗く耳が赤く成っているのに、自然と口角が上がった。
「"善い子だ"。」
敦の肩が跳ねる。機械的に褒めていた先の言葉と同じ語彙なのに、違う感情が込められていたからだ。其れが何かは、分からない。
鼓動が加速する。身体が震える。力が抜ける。
気が付いたら芥川の脚に縋り付くように凭れていた。