シャンデリアの下で、瞳と同じ色をした液体が注がれたワイングラスを翳して、目をわずかに細める神威くん。極上の場所で、極上の美しさをきらめかせる彼は、店内の他の席からもちょっとした注目を集めているのがわかるくらい絵になっていた。しかし、そこに映った自分の顔を見つめていると知っているのは僕と彼だけだろう。知らん顔で鰆のムニエルを口に運ぶ僕の向かいには、名前を呼ぶことが躊躇われる相手——仮にYさんとしよう——が唇をわななかせていた。
僕は口元をナプキンで控えめに拭った後、にっこり微笑んでYさんに問いかける。
「あ、ご趣味は」
★
「恋人のふり?」
ランチタイムのピークが落ち着いた仮面カフェには彼ら以外の客がおらず、秘密の計画を立てるのにはうってつけだった。
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