お見合いBL「新年明けましておめでとうございます」
なんて言っても年末に慌ただしくお見合いした相手の顔なんて覚えてない。と思ったけど顔を合わせれば案外思い出せたな。でも前回は大して話は出来てないし、今回も年始の挨拶メインでそんなに話してる暇はないだろうし、うーん、お見合いってこんなのでいいんだろうか。
相手は寡黙な感じで些細なことに気付ける人、という印象くらいであまりよくわかってない。
だから一応、挨拶程度に個人的な菓子折を持ってきたわけなんだけど、これを、いつ、渡すか。
いやなんというか、親がセッティングしてるとは言え、親の前で堂々と渡すわけにもいかないしな。
なんて頭を悩ませている間に帰りの流れになっていた。しょうがあるまい、ここはお見合いの場。やってやろうではないか。
親にはひとつ遅い電車で帰ると伝え、心構えをする。
「あの、よかったら駅まで一緒に行ってもらえませんか」
言った。言ったぞ。相手は一仕事残っているようで申し訳ないと言ってきたが、その後でもいいと駄々を捏ねてなんとか約束を取りつけた。
客間で少しの間を過ごす、さすが大きな家、というか、他の親戚の方やお知り合いの方が次から次へと押し寄せてくる。ここの家は3人いるからここへ嫁がずうちに来てもらう話も出ているが、さすが長男というか……。丁寧にしっかり育てられたのがわかる対応のようだった。婿に貰うには勿体無さすぎる。かと言ってこのうちに来るのも庶民には荷が重い。さて、どうなるのか。
「お待たせしました。徒歩で大丈夫ですか?」
「は、はい。歩きがてら少し話でもできたらと……」
「わかりました。では行きましょうか」
駅まで15分程。話すことなんて考えてない。どうにか場を凌いで、菓子折を渡せればそれでいい。なんて考えていたらなんてことない世間話を向こうから切り出してくれた。優しい。
駅のそばでなんとか押し付けるように菓子折を渡し、お礼を言って急ぎ足で駅に向かう。今度は好きなものでも訊いておかないとな。
駅で電車を待っていると声をかけられる。まさかの彼だった。まさかあのあと追いかけてきてくれたのか。どこまで丁寧なんだ。
コレと言われメモ用紙を渡される。彼の連絡先だった。
ではお気をつけて、と忙しそうに去る姿は人混みに紛れてすぐ見えなくなった。
電車に乗って連絡先を打ち込み、改めて感謝のメッセージを送ると少しして返事が返ってくる。そこには挨拶と共に好きな食べ物が書かれていた。
思考を読まれている?