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    otaei_micch2024

    @otaei_micch2024

    きわどい絵とかモロな絵とか小説の置き場
    小説のみ、全年齢のものも置いています。
    R18の表記があるものは、高校生以下および18歳以下は閲覧をお断りします

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    otaei_micch2024

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    全年齢 怖い話を見た後のさるちゃんがひたすら甘やかされるお話。依央利視点で展開していきます

    おくるみ今日はみんなで映画を観るんだって。奴隷に課せられた負荷が少し増える日だ。
    昼に食卓で、「夜にみんなで映画を見たい」という提案があった。僕は映画については面白いやつだといいなー、くらいにしか思わないけど、映画を見るための準備は負荷を感じるから嬉しくなる。
    まずは、この家にはテレビがないから、ちょっと大きめのモニターとスピーカーを出してきて。家で映画をみんなでみる位ならこんなもんで終わりなんだけど、この家のムービーナイトにはもう少し準備が必要。特に、今日は大瀬さんが映画を選ぶらしいから、追加の準備が空振りになることはないはずだ。

    まずは、天彦さんだ。今晩は残念ながら居ないらしいけど、頼んでおくことがある。
    「天彦さん、あとでベッドの毛布を洗濯に出してくれない?」
    天彦さんは察しがいい。にこっと微笑みながら
    「あぁ。承知しました。僕は晩御飯前に出てしまいますから、その前に、僕の香水を一振りしておきましょうかね。申し訳ないですが、取り込みはお願いしますね」
    「ありがと」
    「帰宅は日付が変わったあとになるでしょうね。楽しみだなぁ」
    「…もし僕がいなくなってても、変なことは、しないでくださいね」

    次は、大瀬さん。
    この人は僕が何かしようとするとかならずものすごく抵抗するから、悪いけど勝手にやらせてもらう。飲み物を取りにキッチンに出てきた隙を見計らって、大瀬さんの部屋にこっそり侵入する。あったあった、寝袋。腕の中にぎゅぎゅっとまとめて、外に走る。天気がいい。物干し竿にひっかけて、パタパタとはたく。なんだかめちゃめちゃホコリが出てくるけど、よくこれで平然と寝ていられるな。

    あとは、ぼく。僕の部屋にある犬のぬいぐるみも、天彦さんの毛布と一緒に洗濯してしまう。洗った後、天彦さんは香水を振るっていってたから、匂いがつかないように、ぼくのぬいぐるみは、少しドライヤーをしたあとに部屋の中に引っ掛けておくことにした。ちょっとへたってるから、夜には乾くかな。
    それから、買い物に行って、晩御飯の材料や、お酒やお菓子、牛乳も買ってきた。晩御飯の準備と同時並行で、おやつたちも準備を始める。ごはん、ちょっと軽めにしておこう。
    あ、あとひとつ。ふみやさんをちょちょっと呼び出して、一つお願いをしておいたら、これで準備は完璧だ。

    で、ごはんのあとのムービーナイト!
    大瀬さんが選んできたのは、霧深い山奥の村に迷い込んだ青年が、異形のものたちと戦ったり逃げたりしながら脱出を目指すというものだった。
    これ、結構ワクワクして面白い。何が起こるか分からないからドキドキしながら見入ってしまうし、いろんな人の視点で展開していくのも、見え方が違って興味深い。
    ただ1人、ソファの端っこで映画じゃなくて壁をじっと見つめている人もいるけども。
    「猿ちゃん、怖いならお部屋帰ってていいんだよ」
    「怖くねえ、何度言わせんだって」
    そう、猿ちゃんは怖いのが大嫌いなのに頑張って頑張ってここに座り続けてる。楽しい映画見てる時にはポップコーンをおかわりしたりキャハキャハ笑ったりするのに、今日は目の前のお菓子にもつまみにもノータッチ、最初にちょこっと飲んだチューハイの缶もそれっきり放置されている。
    せめてと思って、クッション、抱っこしてる?と渡してみたら、「こんなん抱いて女々しい格好で見れっかバカ」と突き返されてしまった。普段、面白い映画の時は平気でクッションをぼすぼす叩きながら興奮してたり、寝そべってお菓子のクズまみれにしてるじゃん。怖い、に意識向きすぎなんだってば。
    その時丁度、スピーカーから猛烈な打撃音が飛んできて、猿ちゃんの体がびくっと跳ねた。画面の中では古い家屋の扉をこじ開けられそうになってピンチの主人公があたふたしている。猿ちゃんは、…あ、だめだ。目、閉じてる。しかも頬杖ついてるふりして耳も塞いでるな。

    映画終了後、感想を述べ合いながら、お菓子タイム。シェアハウスしていると、こういうことが気軽にできて良いよなぁと楽しくなる。みんなでワイワイ話しながらお菓子をつつく。
    「でさ、慧はどう。どれが1番怖かった」
    ふみやさんが急に猿ちゃんを名指しして感想を求めた。この人はわかっててやってる。いじわるだなぁと思いつつ、猿ちゃんをそっと見た。
    「お、おぅ。あれだな。えと、ほら、警察のゾンビがよ、撃ってきたとき!あれは、ちょっとだけ、びっくりしたよな」
    …それ、めちゃめちゃ最初だなぁ。後にもっともっと怖いのたくさんあったよ。言い方もなんだかしどろもどろだし。
    みんな、それ相応のリアクションを返してあげてるから猿ちゃんホッとしてるみたいだけど…顔はみんなニマニマを隠しきれてない。みんな、悪いなぁ。でも、事実、ちょっと面白い。なんなら、ここまで含めて楽しいからって、選ぶ映画がホラー率高くなってる気もする。猿ちゃんには悪いんだけどね。

    さて、怖い映画を観た後の流れは決まってる。
    一通りおしゃべりを楽しんだ後は、みんな散り散りに己の部屋に戻って行った。僕は、モニターとスピーカーを片付けて軽く掃除機をかけてから、翌日のご飯の仕込み作業を開始する。リビングは、照明を落としてしまった。明かりがついてるのはキッチンだけ。夜も更けてきて、静かなこの時間に何かに没頭するのは、僕は大好き。
    洗い物もひと段落したから、明日の買い物のメモを作ることにした。メモ書きをしている最中、はっと顔を上げると深夜1時が近くなっていた。そろそろかな。

    リビングに通じるドアが、がちゃっと音を立てて開いた。来た来た。
    「猿ちゃん、どうしたの」
    来るのはわかってたけど、言うと怒るから、さも意外だなぁみたいな感じになるように声色を操作して問いかける。
    「…なんでもないけど。いお、なんか飲み物くれ」
    そう言って彼はソファーにどかっと座り込んだ。ホットミルクを作って、出してあげる。
    「はい。ホットミルクでいいよね。寝られない?」
    「…そんなとこ」
    あら、しおらしい。
    猿ちゃんはソファーで大人しくホットミルクのマグカップを手のひらで包み込んで、ちびちび啜り始めた。僕はリビングにつながるドアが開きっぱなしになっていたので、閉めに行こうと思ったら、テラさんがそっと覗いていた。
    「やっぱりここにいたんだね。これ、猿川くんのとこに置いてあげて、あの子、真っ暗じゃ怖いんでしょ、どうせ。」
    猿ちゃんには聞こえないボリュームで、可愛いガラスの装飾がついた小さなランタンを貸してくれたテラさんは、そのまま「おやすみ、依央利くんもほどほどにね」と言って、ドアをそっと閉めて部屋に帰って行った。テラさんからもらったランタンをそっとソファーの隣に置くと、天井にいろんな色の光が細かく反射して広がった。そのまま猿ちゃんの隣にそっと座って、飲み終わったマグカップを回収しつつ
    「嫌な夢でも見た?」
    としれっと聞いてみる。
    「べつに」
    お返事はたった3文字だった。
    怖い話を見たり聴いたりした日はいつもそう。他の人の気配が欲しくなって、猿ちゃんはリビングのソファーで寝る。普段はふみやさんが寝ていることもあるんだけど、それは今日は譲ってあげて、と昼間のうちにお願いして空けてもらっておいた。
    また、リビングの扉が開いた。
    「いおくん、僕の寝袋…あ、ここか」
    大瀬さんがやってきた。
    「昼に干しといたよ」
    「もう、いらないって言ってるのに」
    「ホコリすごかった。もう少し僕に洗わせてくれたらいいのに」
    「…いおくんの部屋も、似たようなもんじゃん」
    大瀬さんは憎まれ口を叩いた後、寝袋を広げようとソファーの裏へ移動した。猿ちゃんの存在については、何も言わない。そして、寝袋をソファーの裏に置いた後、背もたれに手をかけてテラさんが置いて行ったランタンの明かりに見入っていた。
    「きれいですね。プラネタリウムみたい」
    猿ちゃんも「おぅ」とだけいって、2人で天井の明かりをしばし眺めていた。
    すこしの沈黙の後、猿ちゃんはくぁ、とあくびをして、立ち上がった。リビングの隅に置いておいた、取り込んであった天彦さんの毛布と、僕のぬいぐるみを勝手にソファーまで運んで行って、ぬいぐるみを抱えた自分の身体に毛布をぐるぐるに巻きつけて、ソファにぼふんと横になった。
    毛布とぬいぐるみも、猿ちゃんが必要としてることを僕は知っていた。わざと部屋まで運ばないでリビングの隅に置いておいたんだから。ちなみに、前、普通に毛布とぬいぐるみを準備しておいてあげたら、捻くれ者の猿ちゃんは使ってくれなかったから、あくまで洗濯したやつがたまたまそこにあるだけですよ〜というテイで置いておいてあげている。ちょっと面倒というか回りくどいけど、これも良い負荷。しかもこういう時は、自分の毛布よりも、誰か他の人のの方が良いみたい。かかえるアイテムも、僕のぬいぐるみがあれば僕のをだっこしてるけど、無ければソファのクッションだったり、この間酔っ払ってた時は誰かさんのオレンジ色の上着を抱えて寝て、シワだらけにして怒られてたこともあったかな。
    今日も、猿ちゃんは毛布やぬいぐるみに時々顔をうずめてぐりぐりしながら、目をしぱしぱさせていた。他の人の匂いがすると安心するんだね。
    あ、それに大瀬さんの寝袋も。
    いつからか、猿ちゃんがここで寝ようとしてるときには誰かの気配を欲しがっていることを察した大瀬さんは、この部屋でひっそり一緒に寝るようにしてくれてる。だから、寝袋を運んでおいてあげてるんだ。
    前に僕がここで一緒に寝てあげようとしたら「出てけ」って言われちゃったから、そこは僕じゃなくて大瀬さんくらいの距離感がちょうど良いみたい。ちょっと癪だけど。
    大瀬さんはソファーの裏で。猿ちゃんはソファーの上で。それぞれ寝息が聞こえ始めたのを見届けて、僕はそっとキッチンの明かりを消した。リビングではテラさんのランタンの明かりだけがキラキラと輝いていた。そっとドアをあけると、玄関には、ちょうど天彦さんが帰ってきていた。天彦さんは黙ってソファをそっと覗いて、にんまりして、僕と一緒に部屋を出て行った。
    明日の朝まで、ふたりともゆっくり寝られるだろう。理解くんも察して、ここで夜から2人が寝ている時だけは、起こさないであげてくれる。酔い潰れたりしてるときはギャアギャアうるさいんだけど、怖くて眠れないという理由があれば良いみたいで、そっとしておいてくれる。

    みんなの優しさに包まれて、ゆっくり良い夢を見られると良いね。おやすみ。2人のパンだけ、あしたは遅めに焼いとくね。
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