楓可不『candied』『明日、行けなくなっちゃった」』
可不可の両手からはみ出る大きさのスマートフォンの画面に、慣れた手つきで指を滑らせてメッセージを送る。しばらく気づかないといいな、と思ってたのに画面を閉じる前に既読の表示がついてすぐに返事が返ってきた。
『え。どうかした?』
『ぐあいわるい?』
続け様に送られてきたメッセージは、文字からでも楓の声が聞こえてくるような気がした。焦った様子が伝わってきて、ズキリと胸が痛むのに、可不可の口から溢れたのは小さな笑い声だった。
可不可は少し迷って通話ボタンをタップした。すぐに通話終了ボタンを押すと今度はスマートフォンが震え出し、楓からの着信を告げた。どちらかが発信してすぐに通話終了、通話できる状況だったらもう一方がかけ直す。可不可と楓との間でのちょっとした約束になっているやり取りだ。
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