ーGiliaー夜風に乗って煙草の煙が流れていく。
ビュービューと風が吹く20階建てのビルの屋上のフェンスを跨ぎそれにもたれるようにして座り込んで眼下を眺める。
行き交う車や人を見下ろしながら、煙草を吸い込む。
(皆なんのために生きてんだろうなぁ………)
仕事終わりのサラリーマン、子供を連れた主婦、仲良く話しながら集団で並んで歩く学生……
どれも俺にはショーウィンドウに並べられた流行を身に纏ったマネキンのように見えた。
それぞれ一個人としてではく、誰もが同じように見える。
当たり前の幸せ。
それを手にしていながら、ごく当然かのような顔をして歩いている。
どいつもこいつもハリボテの人形だ………
世の中の当たり前という綺麗な見せかけを着飾ってその腹の内ではど汚い本心を抱いて歩いている。
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