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    tohatuka1020

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    #ポケ擬
    pocketComputerSimulation
    #とはつか家うちの子

    マイユ(No.0461♂)の話 ただ褒めてほしかった。
     そんな顔をさせるつもりではなかった。
     ダンスコンテストで賞をとった幼い自分が、育ての親以外にも褒めてもらおうと他のメンバーたちを探している。子どもには少々重いトロフィーを落とさないように注意しながら、やがて大勢の人の中からやっと見つけたその姿に、気分が弾んで笑顔になった。

    「イーネしゃ、ユリしゃ……っ!」

     意気揚々と近付こうとして、ぎくりと足を止める。
     名を呼んだ二匹の前には、一緒にコンテストに出場した幼馴染がいた。こちらに背を向けて立っている彼の表情は見えなかったが、小さな肩は震えていて明らかに元気がない。
     泣いている。
     察した瞬間、掲げかけたトロフィーを慌てて胸に抱き戻した。
     呆然と動けなくなった自分の耳に届いてきたのは、悔しそうに絞り出された幼馴染の声だった。

    「ごめんなさい、負けてしまいました。……僕、精一杯、頑張ったんです……。でも、駄目でした……っ」

     未だに観客の残る会場は、お互いに大声で話さないと通じ合えないほどに騒がしいというのに、彼の声だけは不思議と鮮明に聞こえてくる。
     彼は自身の育て親二匹に対し、何度も謝罪を繰り返しては鼻を啜っていた。

    「そんなことない。よく頑張った。駄目だったなんて言わなくていいんだぞ?」
    「初めて出たコンテストで二位だなんて大したもんだよ。まだ次があるんだから……」

     親たちは口々に慰めの言葉を並べたが、彼はそれすら意地を張って受け入れようとしない。首を横に振って突っぱねる彼の頬には涙がとめどなく流れていて、目が自然と釘付けになる。
     幼馴染の順位は、自分より一個下の二位だった。彼の手には銀色に光るトロフィーがあり、一位の金色は自分の手の中にある。自慢するために持っていたそれを、思わず腕で隠すようにした。
     後退りして再び群衆の中に紛れ、幼馴染から離れる。今自分が出ていってはまずいと幼心に判断した結果だったが、幸いにも彼に気付かれることはなかった。
     見てはいけないものを見てしまった気がして、心の中で自問自答する。
     自分のせいで幼馴染が泣いている事実を、どう受け止めればいいのかわからなかった。

    「そんなつもりじゃ、なかったんだけどなー……」

     自分はただ、楽しくダンスを踊っていただけなのに。
     ぽつりと呟いた声は周囲の喧騒にかき消される。
     抱えているトロフィーの重さが、急に増したように思えた。
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