犬も歩けば猫に出会う「俺……もう、だめです……」
「が、頑張れ、南風……! おい、見ろ! 助かったぞ!」
有能なパイロット二人とは思えぬ足取りで、風信と南風がよろよろと這うように歩いているのは、寒風吹きすさぶ山奥の雪原――ではなく、古めかしい石造りの建物が立ち並ぶ石畳の通りだ。――寒風は吹きすさんでいるが。
古い旧市街は、よそ者を嘲笑うかのように曲がりくねった道と複雑な交差路が張り巡らされている。夜のフライトまで時間があった二人は、この見知らぬ街で買い物にでも行こうと軽い気持ちで繰り出した。だが、朝から歩き続けているのに、目指していた店は一向に見つからない。中心部を外れると、何か食べる店すら見つからず、もうとうにランチの時間も過ぎている。
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