一夜限りのライブを終えて……。「8ビットちゃん、お疲れ様です!」
ライブを終え、衣装を纏ったまま控え室へ戻ってきた彼女。私はすぐさま駆け寄り、蓋を開けたペットボトルを差し出す。汗だくの天使は、背中に着けた偽物の羽を蛍光灯に青く光らせながら、私の腕をすり抜けてソファーに着地した。
「あ~~、疲れたし」
掠れた小さな声が背後から聞こえた。ああ、何か要望がある時彼女はこうする。でもその前に、水分をとってもらわないと心配だ。
「8ビットちゃん、喉渇きましたよね? どうぞ」
もう一度、今度は顔の近くにペットボトルを持っていくが、無視された。
「……あったかいお茶が飲みたいし」
目を閉じたままそう言った後、すぐに見つめてくる。
「ええ? でも今、体熱いでしょう? 冷たいお水の方が」
1551