ユイノウカッコカリ(後雨)「ユイノウカッコカリ…??お里違いでは?」
「そうなのですが、鬼退治や百鬼夜行など近年時間遡行軍の強化が凄まじく刀剣男士様のレベルキャップを解放すべく強化をするという案が政府の中で立っておりまして…試験的に一部の審神者様にその指輪を渡しております」
「私でいいの?」
「はい!こんのすけの推奨で氷雨様を推せて頂きました!」
「腕を買ってくれるのはありがたいんだけど…」
どこぞの海で提督業をしている人たちは艦娘と呼ばれる女の子たちとケッコン?しているという話も聞くけどこっちはどうなんだろう。
「渡せるのは?」
「初の姿でレベルがカンストされている刀剣男士様が対象となっています。累計の経験値が193万必要なので極めている男士様でも大丈夫です」
「試験のモニターなんだよね?」
「はい。反応を見つつ本実装に期待、という感じですね。今回の試験も終われば元に戻ります。どなたにするかお決まりですか?」
「そういうのだったら加州か平野かな…」
何も言わずにそういうのが伝わりそうなのはあの二人のどっちかだ。
リングケースの中には二つのリングが鎮座していて仮で付けてみると片方のリングは私の薬指にぴったりで…いやいつサイズ測ったの、覚えがない。
「…平野に渡したら一期に何言われるか分かんないし加州にしよっかな」
「では加州清光様をお呼びしましょう」
初期刀用に渡してある端末に電話をかけようと思ったら執務室の障子がガタガタと音を立てて開いた。
「ごーけ、開けていいかの確認くらいしなさい」
「ごめんごめん急を要したからさ」
「中傷者でも出た…?いや、出陣してなかったと思うけど」
首を傾げれば後家は首を振る。うん、出陣はさせてなかった。私の記憶違いではなかった。
じゃぁ急を要するとはなんのことなのか。そっと障子を閉めた後家は内番着のまま執務室の中に入ってきた。
「おやつの時間だって呼びにきたんだけど」
「あー確かに甘い匂いがする。焼き菓子の匂い…小豆また何か新しいレシピ覚えた?」
「カヌレだよ。じゃなかった。主、これ加州くんに渡すの?」
「それが一番無難かな、と」
一時的なものなら余計に。
おやつ食べたいし早く済ませちゃおうかと思っていたら仮で付けた薬指のリングをスッと抜かれる。
何故…と思っていたらパキン…と音を立ててリングが砕かれた。
えっ!?壊れた!?
「ちょ、政府からの借り物!!こ、こんのすけ!どうしよう!」
「も、問題はありません!元々そこまで強度は強くないと言いますか…!!」
「後家ストップストップ!!こっちは壊さない!!」
もう片方も壊されそうだったから慌ててリングケースに入ったままの指輪をケースごと掴み、こんのすけに返す。急な破壊魔になるのやめて欲しい。
「こんのすけ、辞退するから持って帰って…あと片方のリングの弁償代は来月の給料から減らしといて…」
「承知しました…しかし氷雨様、弁償代は大丈夫です」
リングを政府に持って帰ったこんのすけを見送り、破片になったリングのカケラを小さな小物ケースに入れる。
鍛刀妖精さんに頼んだら直してくれないかな。
「もう、急に壊すなんて」
「ボク以外に主がその指輪を渡す姿なんて見たくなかったから」
「私が加州と平野大切にしてることは知ってるでしょう?」
「知ってるよ。初期刀と初鍛刀、君にとって一人として代わりがいないことも」
「それなら…「醜い男の嫉妬だよ」…はぁ」
「露骨に溜息を吐かないでくれないか?」
「馬鹿だなと思って」
立ち上げていたパソコンを閉じて椅子から立って伸びをする。甘い匂いがさっきよりも強くなってきてお腹が鳴った。
「罰として明日のお餅付き、後家が頑張ってね」
「!誠心誠意込めて付くよ!」
後日、こんのすけからうちの本丸と似た様なことがモニターを頼んだ他の本丸でも多発して、件の強化システムは延期になったらしい。