お前ら好きだろこういうの(偏見)「どこかに美味しそうな男居ないかなぁ〜」
「愛音さん楽しそうね…」
「氷雨さんも適当に見つけて吸わないと卒業出来ませんよー、大慶くんも」
「俺はちゃんと好みの子を探してるだけ〜」
「氷雨さんも大慶くんも輸血パックしか飲まないと魔力低くなっちゃいますよ」
「俺魔力だけはある〜」
「私も」
「ぐぅ…魔力調整上手い成績優秀組め…」
そういう愛音さんは実技が学年一優秀なのだけど。
小さな紙パックに入った輸血パックをじゅるりと飲み干した大慶が立ち上がって伸びをする。
「まぁ俺も、運命の人見つけちゃう、的な?」
「大慶くん学校の女の子に告白されても笑って誤魔化すだけじゃない」
「むぎゅー俺にも好みってもんがあるのー!2人に見せてあげるからね!俺の運命の相手!」
「あーらら、行っちゃった」
蝙蝠の姿になり、飛んでいった大慶を見る。
彼はどういうわけか異様にその「運命の相手」異様なこだわりを見せる、まさしく執拗なレベルに。
そんな彼が選んだ街がここだ。
「大慶くん行っちゃったし、私も適当に男見つけて食べきますねー」
「…程々にね」
「あは、絞りすぎないように注意しまーす」
笑いながら愛音さんも蝙蝠の姿になって繁華街の方へ飛んでいった。
チームの2人がどうしてもここが良い、賑わっているところがいい、という理由で東京という場所になった。
夜のはずなのに人も多ければ光も多い。眩しい。
夜の眷属である私達にはちょっとキツイ。なんであの2人あんなに元気だったんだろう…。
各店の電飾が激しく主張する広場から一本ズレた薄暗い路地裏で壁に背を預けて座る。
「君、大丈夫?」
「…?」
「体調悪かったりする?そこのドラッグストアで薬でも買ってこようか?…あっ!ごめんボク怪しいものじゃないから!」
怪しくないという男は怪しいのでは…?
見上げると赤銅色の長い髪を乱し、頰に青痣を作った男がいた。
私は別に体調が悪いわけでもないから貴方の方が手当が必要なんじゃないの。
ここに居たら面倒臭いことになりそうだと思ったから立ち去ろうと思って立ち上がった、瞬間にぶわりと馨る【血】の匂い。
頰を殴られただけかと思ったらよく見たら赤銅色の髪に紛れて血がついていたり、黒い服を着ているから分かりづらかったけど服にも付いている。
…何よりこの男ヤバい。逃げなきゃいけないというのが分かっているのに本能が、脳内をそれを許してくれない。
「…え?」
「ごっちーん、絡んできた奴ら全員追っ払って…わーぉ、だいたーん」
路地裏に、もう一人入ってきた気がするけどそれすら気づかないまま、脳みそが沸騰したみたいに夢中になって肌に付いた血に吸い付いた。