二人だけの国放課後、君を見かけた。よくある冬のことだった。寒いのが苦手な彼のために雪が降りませんように、そうマフラーを巻き直しながら願った。
テストが終わった日、かっちゃんの取り巻きのクラスメイト達が皆でカラオケに行くと大きい声で話していた。僕はかっちゃんに気づかれないようにリュックを背負って、それからお母さんに頼まれたお使いのメモをポケットの中に探した。卵とお肉と明日の朝食のパン、出久の好きなもの。メモを確認して、後ろの出口から教室をでる。
「緑谷もいちおー誘ってやる?」
かっちゃんの取り巻きが大きい声で話している。僕は一度振り返ってしまう。あ、遅かった。かっちゃんと目があってしまう。嫌そうに目を細められる。
背中を丸めて急いで教室からでる。かっちゃんがなんて言うかを想像する、結構得意だ。誘わなくていい、あいつがくるなら俺は行かない、どっちかだろう。どっちかだといいな。まだ僕にもかっちゃんのことがわかるって自信になるから。リュックの紐をギュッと掴んだ。
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