見つけたあぁ、前のバンドが終わる…。
柊の誘いを受け入れて、必死で曲を完成させた。
俺の知らない人間の作ろうとした曲を、大切な人の大切な人の曲を始めなくちゃいけない。
「やりたくない」、のオンパレードだった日々だったけど柊と玄純の目を見てああ、この2人も覚悟を決めてこの曲と向き合おうとしているのだと思うと完成させてみたくなった。
真冬は、来てくれるのだろうか…
このところ、うまく避けられ続けて話もろくにできていないけど。
聴いてくれるだろうか、俺が聴かせたくなったこの曲を。
畜生、ステージに立つのってこんなにも怖かったっけ。
あぁ、客席が暗くて良かった。
じゃなきゃ俺は真っ先に真冬を探してしまう。
必死にフリをした、機材をいじるふりを、ギターの弦を確認するふりを、前を、客席を見ないように。
柊がMCを始める、ほんの少し震える声を笑いで誤魔化しながら。
その声が一瞬だけ途切れた。
きっと知り合いでも見つけたのだろう。顔の広いアイツのことだから。
なかなか顔を上げられないまま、最初の曲が始まる。
トリにしようと言ったけど、柊は「真冬はきっと最初から来る。そうじゃなきゃ最後まで来ない。」と笑って言うものだから、俺の意見は却下された曲。
始まってしまえば、終わるまで音楽は止まらない。
集中しろ、集中しろ…。
気づけば、曲の終盤、俺は自然と視線を客席に向けていた。
あぁ、なんだ。来てたのか。
…なんだ、来てたのか。
そう思うと、笑みがこぼれた。