手「真冬、ほら。」
【手を繋いで海へ…】
「うん。」
由紀とは手なんて、多分小学生の頃以来繋いでいなかったと思う。
どんな手だったっけ…。
"真冬、行こーぜ"
「手、繋ぐの」
"嫌なのか"
「由紀さっきトイレ行って手、洗った」
"あ…"
「…」
"冗談だって、ジョーダン。"
繋いでいるのは由紀と全く違う手なのに。
「…冬、おーい、…真冬。」
「何、上ノ山くん。」
「お前、また何か思い出してただろ。」
「ごめ…」
「謝んなくていいけど。いや、ちょっとムカつく…たぶんお前にとっちゃなかなか忘れらんない奴なんだろうけど、あんな歌まで残すくらいお前のこと好きだった奴のこと忘れろって言うのは「上ノ山くん。」何だよ、」
「どうして、上ノ山くんはいつも俺と手をつないでくれるの」
「そんなことかよ。」
「うん。」
「真冬と…恋人と、手をつなぎたいから、です。」
もう二度と、大切な人の手は離さないでおこう。
耳まで赤くして言う不器用な君。
それでも、どれだけ格好悪くても真っすぐに愛をくれる君の手だから、
「……なんか、言えよ。」
「今の言い方、梶さんっぽかった。」
「マジでじゃなくてさ、」
「おじいちゃんになるまで、よろしく。」
「ははっ、何だよそれ。」