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    智美。

    @satomineta

    何となく新しいポイピク垢作ってみた。
    Twitter(X)雑多垢: @satomin0118
    支部:https://www.pixiv.net/users/852859
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    智美。

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    【ボーボボ/SS 】随時更新。ほんのり軸。ソフビュ兄妹、首領パッチ、破天荒(ヘッポコ丸やボーボボも出したい(願望))。終わらん助けて***20241201
    ブログ⇒https://stm.dou-jin.com/Entry/1/

    #ボボボーボ・ボーボボ
    boboBoboBobo.
    #ほんのり!どんぱっち
    #途中進捗
    progressOnTheWay

    Con anima***1
     ――やったー! 〈    〉、首領パッチ君!
    「(……あの人、誰なんだろう)」
     ビュティは夕ご飯の支度をしながら、昨晩見た夢のことを考えていた。考え事をしながらも夕ご飯は着実にできていく。
     夢のなかではアフロの男性と首領パッチがふざけながら敵らしき男性と戦い、ビュティは珍妙な技を披露するアフロと首領パッチにつっこんでいた。敵は自分のペースを崩されてそのままやられてしまう。バトルの最中は容赦のないつっこみを入れていたビュティも敵の撃破時には素直に喜んだ。
     夢のなかの彼女の服装は見慣れないものだった。へそ出しは羞恥心が勝り人前ではさらせない。カラオケボックスのなかですら友人の前で声を出して歌うことができない彼女には難易度が高い。
    「(それにしてもあんなにふざけてる首領パッチ君は初めて見たかも)」
     その首領パッチは最近こちらの世界にやって来た破天荒とともに外に出ている。夕食は首領パッチと二人で食べることが多かったが、破天荒が来てからは破天荒も加えて三人で食べることが増えた。おそらく今日も三人で食べることになるだろう。
     破天荒はときどきヘッポコ丸が仲介役となりアルバイトをしている。彼は首領パッチがいるこちらの世界に馴染もうとしていた。首領パッチのことで好敵手として見なされることもあるが基本的にビュティと破天荒の仲は悪くない。
    「……うん、いい感じ♪」
     味見をして時間を確認する。彼らがこの家に戻ってくるのはまだ先だ。ビュティは火の元を確認して台所から離れた。自分の部屋に行き、ノートを開く。勉強用とは違う日記兼自由帳はお気に入りのシールや友人と撮ったプリクラも貼っている。
     兄が自分の進路を決めた頃から彼女はこのノートに日々の出来事を書きつづった。兄が恋しくなったときに見返してそのときのことを思い出せるように。
    兄が遠くに行ってからは兄への手紙にその出来事を書けるように、友人たちとのささいな出来事もノートを見たら追想できるように。彼女はノートと向かい合う。
    「なんか違う」
     ビュティは首を傾げる。悲しいことに、夢で見た光景にビュティの画力が追い付かない。消しゴムで消してシャーペンで描いてを繰り返していると横に橙色のトゲトゲが見えた。彼女ははっとする。
     彼女は夢中でノートに書きこんでいた。時間を忘れていた。ノートを勢い良く閉じて椅子から立つ。ノートの内容を首領パッチに見られた訳でもないが彼女の表情は硬い。
    「破天荒が下で待ってるぜー」
    「呼んできてくれてありがとう。行こっか」
    「マカロニーマカロンー」
    「何それ。たしかに似てるけど」
     首領パッチは自作の歌のような何かを口ずさみながら人間用に設計された階段をスイスイと下りる。ビュティはそんな首領パッチに相づちを打つ。
     破天荒は分かる範囲で夕食の準備をしていた。首領パッチと再会した日に作った料理はビュティ曰く《漢の料理》だったが、落ち着いた状態では彼女の代わりに腕を振るうこともある。
    「嬢ちゃん邪魔してるぜ」
    「破天荒さん、準備してくれてありがとうございます」
    「おやびんもオレも腹が減ってるんで」
     破天荒のビュティに対するそっけない対応も慣れたものだ。むしろそれが平常運転で、首領パッチだけが特別なのだと知ってからは彼女も安心して破天荒と会話をする。そもそも、破天荒はビュティに対して本当に冷たく接している訳ではない。
     この世界に来てからは敵襲に遭うことも自ら適地に乗り込むこともしないが、破天荒なりにビュティのことを仲間だと認識している。彼女と首領パッチの関係を確認して彼女のことをある程度認めていた。
     首領パッチから紹介されたヘッポコ丸のこともアルバイトの先輩としてこの世界の住人ではビュティの次に関わっている。ヘッポコ丸の首領パッチへの対応の仕方に怒りをあらわにするときもあるが、破天荒はヘッポコ丸のことを邪険に扱え切れない。
    「そういえばへっくんのお手伝いでしたっけ? 破天荒さんがいるとへっくんの仕事がなくなっちゃうかも」
    「オレは構わねぇけど」
     ビュティは破天荒と会話しながら仕上げに入る。首領パッチは椅子に座って目を輝かせていた。彼女の世界は首領パッチを通じて広がっていく。首領パッチと破天荒がたまに話すハジケた日々は夕ご飯の花を添える。
    「「「いただきます」」」
     ご飯が冷めないうちに、三人は手を合わせた。この日の話題は首領パッチと破天荒が今日経験した出来事だ。破天荒の首領パッチ愛は破天荒を知る者なら周知の事実になっている。
     首領パッチのことを雑に扱うこともあるヘッポコ丸とは険悪な雰囲気にもなるが、そんな雰囲気を作る元凶でもある首領パッチがうまい具合に手綱を引く。
    「破天荒さん、おいしくないですか?」
    「い、いや、そういう訳じゃ……」
     破天荒がビュティをちらちらと見る。最初は小さな点だった。それは日に日に大きくなり、無視できないものとなって彼のなかにいる。――忽然と消えてしまう。それは首領パッチだけなのか。
    「(そういう考えはなしだ)」
     破天荒は心のなかでかぶりをふる。違和感に気を取られて首領パッチと食べるご馳走が台無しになるところだった。ビュティは首を傾げるが味に文句がある訳ではないようなので食事を再開する。
    「「「ごちそうさまでした」」」
     食器を片付けながらビュティは二人に兄が来ることを伝える。目まぐるしく変わる日常で報告するのを忘れそうになっていた。何度か対面している首領パッチはともかく、破天荒には事前に伝えておかないと首領パッチ関連でひと波乱が起きかねない。
    「あ、そうだ、今度の土曜日にお兄ちゃんが帰ってくるって。破天荒さんのことも伝えてあるから」
    「ソフトンが帰ってくるのか!」
    「あー、オレってもしかして邪魔か?」
     破天荒のひと言にビュティは首を振る。彼女としては新しい同居人である破天荒のことを兄に紹介したかった。個性豊かな同居人に囲まれて充実した日々を送っている、と。
    「邪魔じゃないですよ! むしろ迷惑じゃなければいてほしいというか……」
     彼女は片付けの手を止めてやや上目遣いで破天荒のことを見た。首領パッチも彼女に同調する。
    「ビュティもそう言ってんだし会ってみたらどうだ?」
    「おやびんがそう言うなら」
     首領パッチの言うことにはとことん弱い破天荒であった。ビュティは顔を綻ばす。そんな彼女の表情を見て破天荒はまんざらでもない気持ちを抱く。片付けを済ませてビュティはお風呂に入る。


    ***2
     ビュティが動くたびに桃色の髪が軽やかに揺れた。ときおり鼻歌を歌いながらスキップをする。なんの変哲もない家が彼女のために宛がわれたステージのようだ。学校からの宿題は意識のはるか遠くに追いやった。
    「〜♪」
     彼女は明らかに浮かれている。いつも通りハジケている首領パッチへのつっこみも控えめだった。控えめというか、そこまで彼女の気が回っていない。日中は学校で授業を受けていたが、勉強にあまり身が入らない。事情を知っている彼女の友人はそんな彼女をからかいながらも見守っていた。
     大好きな兄が帰ってくる、彼女にとってその事実は何よりの吉報だ。学校から帰ってきた彼女は荷物を自分の部屋に放り投げてリビングで兄の帰還を今か今かと待つ。インターホンが鳴ると彼女は一目散に玄関へ向かった。
    「ただいま、ビュティ」
    「おかえりお兄ちゃん!」
     ビュティは兄に抱きつく。彼は妹の頭を撫でた。もう片方の手にはお土産が入った紙袋を持っている。彼の服や日用品は家にも置いているので帰省するたびに大荷物を持ってくる必要はない。ひと回り大きいリュックに収まる程度でなんとかなる。
    「元気そうだな。首領パッチとは仲良くしてるか?」
    「うん!」
    「ソフトンも元気そうだな! 破天荒、荷物持てよ!」
    「はい、おやびん!」
    「ああ、すまない。君が破天荒君か」
    「呼び捨てで構わないっすよ。オレもそうするつもりなんで」
    「分かった」
     首領パッチの号令により破天荒が紙袋を持つ。ソフトンは彼らのノリに動揺することもなく紙袋を破天荒に手渡した。ビュティも破天荒に礼を言って兄の手を引く。普段の彼女は首領パッチに引っ張られることが多いが今の彼女は積極的になる。ソフトンと離れて暮らすようになってから彼が帰ってきたときには甘えるようになった。
     破天荒は首領パッチの指示に従う。ソフトンの荷物はあっという間に所定の位置に配置された。
    「アイスもたくさん用意したよ」
    「あのアイスはここでしか売ってないからな。夜ご飯のあとに四人で食べようか」
    「うん! お兄ちゃんがいない間にいろんなことがあったんだから覚悟してね」
     今のビュティに尻尾が付いていたら元気に揺れていただろう。自分の夢のために妹を置いてきたことを負い目に感じていた時期もあったが、毎回こうして快く迎えてくれることにソフトンは安堵している。手紙や電話だけだと把握できないこともあった。
     彼女が兄や両親と離れて暮らしていても気丈に振舞えるのは突然現れた居候の存在も大きい。兄妹の両親は仕事の都合でほとんど家を空けている。首領パッチは一軒家にひとりだけ残って暮らしていた彼女の隙間にすっと入り込んだ。
    「……だろうな」
     ソフトンはトゲの付いた一頭身の首領パッチを慕う人型の破天荒を横目で見る。話には聞いていたが、実際に見るとなかなかにインパクトが強い。ビュティも初対面のときこそ面食らったものの、今では日常の一部として溶け込んでいる。

     夕ご飯を食べ終えてからもビュティは普段はいない溝を埋めるかのように兄に最近の出来事を話し続けた。翌日が休日なこともあり夜遅くまで話し込む。ビュティが自分の部屋に向かう頃にはもう少しで日にちをまたぐところだった。
    「お兄ちゃんは?」
     眠気眼をこするビュティの問いにソフトンは空のおちょこを持つ。首領パッチは大あくびをした。てっぺんのトゲがやや曲がっているように見えるのは気のせいだろうか。破天荒はそんな首領パッチを頬を緩めながら見つめていた。
    「せっかくだし一杯飲もうと思ってな」
    「もしかして私が寝るまで待ってくれたの?」
     ソフトンは首を振る。そしておちょこを置いてからビュティに話しかけた。ソフトンだって兄妹の時間を少しでも長く過ごしたいと思っている。数日後には再び長い間離れ離れになってしまうのだから。夢のために自分で選んだ道と言えど寂しくない訳はない。
    「お前が楽しそうに話してるからつい。明日また話そう」
    「はーい。おやすみ」
    「おやすみ」
     ソフトンはビュティと首領パッチを見送って破天荒に目を向けた。
    「酒は飲めるのか?」
    「飲めないのは嬢ちゃんぐらいだと思うぜ?」
     ソフトンはおちょこを破天荒の前に差し出す。お互いに不敵な笑みを浮かべた。
    「今夜は付き合ってもらおう」
     二人とも限度を知っているのでほろよい気分で止まる。飲み過ぎて真夜中の家で大惨事になる悲劇は回避した。首領パッチがビュティやヘッポコ丸にカミングアウトしたことをソフトンにも話すことも考えたが、破天荒は結局口に出すことはしなかった。
     ソフトンも不思議な同居人について不用意に深掘りするつもりはない。首領パッチとはなんだかんだ長い付き合いになり、その首領パッチや妹が受け入れている破天荒も彼女に害を与える存在ではない。それさえ分かれば兄としては充分だった。
    「ここにいる間はビュティを頼む」
    「まぁおやびんがいる限り嬢ちゃんのこともある程度は見ますよ。喧嘩慣れはしてるんで」
    「分かった。首領パッチにもとんだ伏兵がいたものだ」
     喧嘩のひと言で済ませてもいいのか分からない激闘の連続だった。ソフトンはそれを理解しつつも口角を上げる。首領パッチを慕っている存在が自分と同じ尺度を持っているとは限らない。妹が幸せそうなら、周囲と不和が生じなければそれでいい。
     楽しい時間はあっという間に過ぎていく。兄妹で遊びに行ったり、四人でヘッポコ丸に会いに行ったり、ビュティは日頃から考えていたことを行動に移す。彼女たちに与えられた時間は少ない。
     土曜日や日曜日もあっという間に終わり、祝日の月曜日がやって来る。


    ***3
    「(おやびんは今日もかっこいいっす)」
     破天荒は庭で首領パッチを眺めていた。室内にいるビュティと首領パッチが窓を開けて破天荒に声をかける。
     ビュティは外出する予定がないのか、先日兄が帰ってきたときにもらった苺味のソフトクリームが描かれたTシャツにスエットパンツというラフな格好だった。首領パッチは別の単語を言おうとするが、ビュティはソフトクリームと言い切る。その単語を口にしたら最後、首領パッチのご飯の量が少なくなる。
     破天荒はピンクのとぐろ状のあれにどこか既視感を覚えながらもトゲが丸くなった首領パッチを見た。
    「破天荒さん、お菓子があるので一緒に食べませんか?」
    「お前、はたから見たら不審者待ったなしなんだよ」
    「おやびんがそう言うなら!」
     首領パッチに会うためならばと見ず知らずの新天地に飛び込んだ破天荒はビュティの家の庭に住んでいる。ビュティとしては空いている部屋のひとつを使ってもいいと思っていたが破天荒的にはそうもいかない。
     破天荒いわく首領パッチを敷地内で眺められるベストポジションが庭なだけなのだが。あくびが出るような退屈な場所にわざわざいる意味。
     最初はまた元の世界で旅に出れるのではないかと淡い期待を抱いていたが、ビュティと首領パッチの関係を見て少なくとも彼女がいるうちは無理だと悟った。
    「首領パッチ君、このお皿机に並べてくれる?」
    「あたり前田のクラッカー!」
    「破天荒さんはまず手を洗ってください」
    「わーってるよ」
     三人でお菓子を食べ終え、首領パッチはひとりで外に出ている。破天荒がお供します、と告げると首領パッチは全力で拒絶した。泣きながらも首領パッチの言いつけを守る破天荒の忠誠心にビュティは感心する。
    「自由ですね、首領パッチ君」
    「おやびんはそういうお方です」
    「たしかに。……」
     ビュティは目を細める。破天荒は彼女の髪色と同じ花びらを持つ木を連想した。春が終われば散ってしまう儚い命。人間である彼女は破天荒や首領パッチより脆い。それは首領パッチや破天荒がいた世界でもそうだ。
     術を持たない人間はあっけなく毛を刈られて自らの人生を悲観することがほとんどだ。知恵を用いて生き延びていくこともあるが、それには運も必要になってくる。
    「(誰だ?)」
     破天荒の脳裏に浮かんだのはビュティとよく似た少女。はっきりとした全体像も名前も思い出せない。破天荒は眉間に皺を寄せた。
    「破天荒さん、変な話をしていいですか?」
    「あ、ああ」
    「首領パッチ君、私を通して違う人を見てるときがあるんです。それがちょっとだけ悔しくて、でも本人には聞けなくて。破天荒さんに改めて言われたときに、やっぱり首領パッチ君って掴みきれない人だなって」
    「……ああ」
     破天荒は彼女に気の利いた言葉をかけることができない。兄が帰ってきたときに、彼女がどれだけ兄に懐いているのかが痛いほどに伝わった。それと同時に、首領パッチのことも家族の一員とみなしていることも。
    「(割り切れっていうのは酷な話か)」
     ビュティは視線を下げる。破天荒は苦い顔をする。桃色の髪の毛、ハジケリストに一級品のつっこみを入れる、戦場に立つにはあまりにもろい少女。
    「(ったく、めんどくせえ)」
     破天荒は分別をしているつもりだった。……いや、あえて記憶に鍵をかけていた。ビュティが自覚しているのかしていないのか、彼女も掴み切れない人ではある。破天荒からの反応が芳しくない。彼女は微苦笑を浮かべる。
    「ごめんなさい、突然そんな話をされても困りますよね?」
    「いや、むしろ腑に落ちた」
    「え?」
     破天荒を困惑させていたと思っていたビュティが戸惑う。彼女のとっさに出た声が上擦った。
    「悔しいけど、嬢ちゃんはおやびんに大切にされてる」
    「破天荒さんこそ。〈私〉は首領パッチ君に住処を提供しただけです」
     この世界が破天荒たちがいた世界とどうつながっているのか、遠い過去なのか偶然似たような存在がいるだけの平行世界なのかはまったく分からない。それを解明する必要性を彼らは感じていない。
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