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    summeralley

    @summeralley

    夏路です。
    飯Pなど書き散らかしてます。

    ひとまずここに上げて、修正など加えたら/パロは程よい文章量になったら最終的に支部に移すつもり。

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    summeralley

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    #飯P版深夜の真剣お絵描き字書き60分一本勝負
    お題【写真】

    #飯P
    #腐女子向け
    #二次創作BL
    secondaryCreationBl

    【飯P】ファインダー越しに 「……こんな感じだったかなぁ」
     僕は机の上の一枚の写真を見つめ、ため息をついた。
     「きちんと撮れているんじゃないのか?」
     横合いからピッコロさんが声をかけ、写真を手にとって眺める。
     物置で遊んでいた悟天が、おじいちゃんの古いカメラを見つけたのは先週だった。ずっしりと重量感のある、フィルム式のカメラだ。すぐさま「みんなの写真を撮る!」とカメラを持ち出した弟へ付き添って、僕もあちこち出歩いた。
     誰も彼も、古いカメラを面白がり、快く撮らせてくれた。女性陣には、化粧を直すから待てと言われたが……それでも、断られることはなかった。そして、「現像したら見せに来い」と全員に言われた。撮ったものがその場ですぐ見られないというのは、却って新鮮だ。
     悟天は今、自分の部屋で、現像した写真を一枚一枚アルバムに綴じている。今度は、あれを見せて回るのに付き添うことになるだろう。
     ピッコロさんが眺めているのは、最後に訪ねた神殿の前庭での一枚だ。全員の写真を撮った悟天から「一枚残ってるから、最後は兄ちゃんが撮っていいよ!」と譲ってもらった。
     かすかな風もやわらかい晴天のもと、僕はピッコロさんにカメラを向けた。素直に視線を寄越してくれるピッコロさんとファインダー越しに目が合うと、生まれてはじめて目が合ったかのように鼓動が早くなった。その姿を写真に閉じ込めるべく、慎重にシャッターを切った。
     「……こんな感じじゃなかったと思うけどなぁ。なんか違うんですよ」
     ピッコロさんが手にした写真を覗き込み、僕は首を傾げた。視線がぶつかると、ピッコロさんはわずかに目を眇める。
     「何だか分からんが、自分の写真を見てそうも違う違うと言われると、あまり良い気はしないな」
     ピッコロさんは憤慨し、手に取っていた写真を机へ戻す。
     「僕の記憶だと……ファインダー越しに、もっと深く、あたたかな情愛が感じられたんですが」
    「じょうあい」
    「現像する過程で、そういうものって抜けてしまうんでしょうか」
    「……写真から、情愛など感ぜられるわけがないだろう」
     ピッコロさんはすっかり鼻白んで、ただの印刷物だ、と冷静に述べた。
     僕はどうしても納得がいかず、腕を組んで写真を眺める。
     初春のぼやけた青空を背負って、ピッコロさんが皮肉っぽい微笑でこちらを見つめている。陽光はやわらかく、雲は殆どない。ピントは合っているし、どこがどう悪いということもない、普通の写真だ。
     しかし、ファインダーを覗いた時は、確かにもっと……言い方はありきたりだが"想い"のようなものが感じられた気がしたのだが。初心者が撮ったのだから、いざ現像してみればこんなものなのだろうか。
     その時突然に、部屋の扉が開いて悟天が入ってきた。ピッコロさんが顔を向け、微笑んで尋ねる。
     「アルバムは出来たか?」
    「もう少しだよ、ピッコロさんにも見せるから。兄ちゃん、もしかしてボクの……」
     あっ、と声を上げて、悟天は机の写真を引ったくった。
     「やっぱり! ボクが撮ったピッコロさんの写真だ! ごめんね、間違って渡したみたい。兄ちゃんのはこっち」
     悟天が一枚の写真を差し出す。同じ春の空と、神殿の白い建物を背景にした、ピッコロさんの写真だ。
     「何故それが悟飯の写真だと分かる?」
     ピッコロさんが首を傾げると、弟は自分の写真を指差して胸を張った。
     「見て! ボクがピッコロさんを撮った時、たまたまトビが通ったんだよ。カッコよくない?」
     確かに背景の空に、斜めに飛び去ろうとする鳶の姿があった。写真として格好良いかは、疑問の残るところだが。
     悟天は慌ただしく部屋を出て行き、机には僕の撮った写真が残された。
     「……ああ、ほら、見てください」
     僕は改めて、写真に目を凝らす。初春のぼやけた青空を背負って、ピッコロさんが穏やかな微笑でこちらを見つめている。その目に宿る光の、あたたかな色。ただの印刷物のはずなのに、間違いなく、それは感じられる。
     「情愛……」
    「ね? こうだったんですよ。よかった、いい写真が撮れてて」
     目線を落としたピッコロさんの指が、写真にそっと触れる。何か言いたそうな唇が、渋々といった具合に閉ざされていた。なんといっても、写真の中のピッコロさんが、反論や否定を不可能にしていたのだから。
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    Replies from the creator

    summeralley

    DONE急いで進めてるけど12話くらいにはなってしまいそう……少し先でベッドシーンで丸々一話使ったせいで……。
    ネイPのP、ちょっと子どもっぽく書いてしまう。
    【ネイP】解剖台で夢を見た/04.聴診器の語るもの ネイルは殆ど、家へ帰らなくなっていた。職員がみな帰るのを待ってから仮眠室へ下りるので、それから帰宅となるとどうしても遅くなる。
     元々、仮眠室へ寝泊まりすることはそう珍しくなかった。同じフロアに、簡易的なシャワールームもある。食事は水で事足りる。コインランドリーは研究所の道向かいだ。
     ――家へ帰ったところで、仮眠室の様子が気になって眠れず、警備員が驚くような早朝に出勤することになる。
     自らが切り刻んだ研究対象への執着なのか、単純な個への執着なのかは、判然としなかった。それでも、寝袋を持ち込んで寝泊まりするようになるのは、ネイルにとって自然な選択だった。
     その日ネイルは、どこか浮き足立っていた。
     石室の標本に関する嘘の報告書は問題なく受理され、更に詳しく検査を進めるようにとの文言を添えた、検査項目のリストだけが戻ってきた。それも、時間がかかることを誰もが理解できる検査項目ばかりで、当分の時間は稼げそうに思われる。
    3016

    summeralley

    DONE10話くらいで終わりたいとか言ってたのに、少し先の話に性的なシーンを入れたので予定が狂って10話で終わるの無理になりました。ネイP次いつ書くか分かんないし、どうせならって……。
    【ネイP】解剖台で夢を見た/03.新しいラベル 「石室の標本について、何か分かったか?」
    「報告書の通り、特段変わったことはありません……何しろ前例がないので、手探りで。慎重に進めています」
     ムーリは頷き、引き続き任せる、と研究室を出て行く。ケースの観察窓を覗かれなかったことに、ネイルは胸を撫で下ろした。研究者としては、それが正しい振る舞いだ。以前ネイルがそうせずにいられなかった、無闇に観察窓の蓋を開ける行為は、暗闇で保管されていた検体にどのような影響を与えるか分からない。
     ネイルの返答は、完全な嘘ではなかった。このような現象に、前例があるはずもない。腐敗せず、硬直もしない遺骸など……ただし「変わったことはない」という部分は、真っ赤な嘘だ。
     石室の標本はもう、標本ではない。さりとて、それを報告できようか? おそらく、上層部の判断で、もっと大きな研究所へ送られることになるだろう。戸籍もない古い時代のナメックが、「呼吸する標本」……良くて「実験動物」として扱われることなど、目に見えていた。
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