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    summeralley

    @summeralley

    夏路です。
    飯Pなど書き散らかしてます。

    ひとまずここに上げて、修正など加えたら/パロは程よい文章量になったら最終的に支部に移すつもり。

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    summeralley

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    #飯P版深夜の真剣お絵描き字書き60分一本勝負
    お題【修行】

    セル編🍚かハイスク🍚かどっちで書くか迷ったけど、最近セル編🍚書いてない気がしたので……

    #飯P
    #二次創作BL
    secondaryCreationBl
    #腐女子向け

    【飯P】指南すべきは宵に尽く 夏の夕暮れの風は、実にゆっくりと夜を連れてくる。濃く湿った夕陽が落ちるにつれて、地平線に近い空の底だけが鮮やかな紅色に染まり、天頂から滑り落ちる濃紺は、紫を経てそこに到達する。
     ピッコロさんが無言のままに服を整えるのを、僕は地面に座り込んで見ていた。最後の最後で、躱すことも受け流すこともできず拳を受け止めたから、手のひらに痺れが残っている。手を握り込んで、また開いて、じっと眺めていると、ピッコロさんから声がかかる。
     「そろそろ、終わりだな」
    「はい! 明日また……」
    「違う。おれではもう、セルすら圧倒したお前の修業の相手にはならん。今日で終わりだ」
     僕は言葉の意味を理解できず、少しのあいだ返事に詰まった。草擦れのかすかな音が、やけに遠くから響くようだ。一瞬の後に慌てて身を乗りだし、手のひらをかざした。
     「そんなこと……最後、躱せなかったし」
    「その一回だけだろう。その一回しか、まともに当てられなかった」
     ピッコロさんは淡々と言い、かざしていた僕の手を引いて立ち上がらせてくれる。僕は言葉を重ねようとしたが、何を言っても空々しくなりそうで、ピッコロさんの手を強く握り返した。自分の力や、相手の力を見誤るような人ではない。ピッコロさんが、僕にはもう教えられないと確信しているなら、きっとそうなのだろう。
     「お前が強くなって、これほど嬉しいことはない。伝えるのが遅すぎたくらいだ……」
    「……じゃあ、もう、こうやって、修業のために毎日のように会うことも」
     ピッコロさんは珍しく戸惑った様子で、言い淀んだ。
     「そう……だな、何も教えることがない以上、こう度々、来る必要はないだろう」
     僕は暫し、俯く。青く繁る夏草の上、薄らぎはじめた二人の影が同じ方向に伸びている。僕の手はまだまだ子供の手で、ピッコロさんと比べるとずいぶん小さかった。
     「……だったら、今度は僕が教える番になります」
    「なにを」
    「思ってること、素直に伝えるやり方とか。相手が好きだって思ったら、どうするのかとか。ピッコロさんそういうの、苦手そうだから」
     たそがれる草原に、沈黙が落ちた。ピッコロさんは一笑に付すでもなく、かといって僕の不躾な物言いに怒るでもなく、掴まれたままの手を静かに引き抜こうとした。
     「伝えるのが遅すぎたって言いましたね。何故?」
     僕は手に力を入れて、逃がさないように指先を絡める。修業を終えたばかりの身体は、指先もいつもより少しあたたかい。
     暫く黙ったまま手を引こうとしていたピッコロさんが、とうとう観念したかのようにため息をついた。
     「……修業という目的があればこそ、お前は会いに来るだろう。それがなくなるのが、惜しかった。さりとて、永久にこうもしていられない」
     僕はつい笑ってしまい、今度はほんの少し睨まれる。
     笑いたくだってなる。そんなのずっと、僕の方が考えていたことだ。修業という名目があるから、何でもないような顔をして日々会いに行けたのだ。同じようなことを考えながらも、互いにそれに気付かず過ごしていたなんて、僕らは本当に修業不足だ。
     「じゃあ、明日からはピッコロさんの修業のために訪ねますね。好きだってこと、伝える方法の修業」
    「……さっきから、おれが誰を好きだって?」
    「僕ですけど……違いましたか?」
     笑顔を引っ込めて目を合わせると、ほんの一瞬だけ視線が伏せられる。すぐに目が上げられ、まなざしがしっかりとぶつかった。
     「違わない」
     忍び寄る宵闇を通しても、そこにだけ入陽が残ったような瞳には、確かな力と真摯な熱があった。
     「……思ったより、上手ですね、伝え方」
    「元弟子に舐められてばかりいられるか」
     ピッコロさんは冗談めかして笑って、今度は反対の手まで使って、とうとう僕の手を引き剥がした。
     「教わることがなくなっても、僕はずっとずっとずーっと、ピッコロさんの弟子ですよ」
    「明日からはおれが弟子ではなかったのか?」
    「ううん、二人で修業していきましょう、明日からも」
     草原に、ひそやかに湿った夏の夜が降りてくる。手をぐっと握りしめてみても、力強い拳を受け止めた痺れは既に残っていない。ただそのかわりに、長いこと手を繋いでいたピッコロさんの体温が、甘く残っている気がした。
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    Replies from the creator

    summeralley

    DONE急いで進めてるけど12話くらいにはなってしまいそう……少し先でベッドシーンで丸々一話使ったせいで……。
    ネイPのP、ちょっと子どもっぽく書いてしまう。
    【ネイP】解剖台で夢を見た/04.聴診器の語るもの ネイルは殆ど、家へ帰らなくなっていた。職員がみな帰るのを待ってから仮眠室へ下りるので、それから帰宅となるとどうしても遅くなる。
     元々、仮眠室へ寝泊まりすることはそう珍しくなかった。同じフロアに、簡易的なシャワールームもある。食事は水で事足りる。コインランドリーは研究所の道向かいだ。
     ――家へ帰ったところで、仮眠室の様子が気になって眠れず、警備員が驚くような早朝に出勤することになる。
     自らが切り刻んだ研究対象への執着なのか、単純な個への執着なのかは、判然としなかった。それでも、寝袋を持ち込んで寝泊まりするようになるのは、ネイルにとって自然な選択だった。
     その日ネイルは、どこか浮き足立っていた。
     石室の標本に関する嘘の報告書は問題なく受理され、更に詳しく検査を進めるようにとの文言を添えた、検査項目のリストだけが戻ってきた。それも、時間がかかることを誰もが理解できる検査項目ばかりで、当分の時間は稼げそうに思われる。
    3016

    summeralley

    DONE10話くらいで終わりたいとか言ってたのに、少し先の話に性的なシーンを入れたので予定が狂って10話で終わるの無理になりました。ネイP次いつ書くか分かんないし、どうせならって……。
    【ネイP】解剖台で夢を見た/03.新しいラベル 「石室の標本について、何か分かったか?」
    「報告書の通り、特段変わったことはありません……何しろ前例がないので、手探りで。慎重に進めています」
     ムーリは頷き、引き続き任せる、と研究室を出て行く。ケースの観察窓を覗かれなかったことに、ネイルは胸を撫で下ろした。研究者としては、それが正しい振る舞いだ。以前ネイルがそうせずにいられなかった、無闇に観察窓の蓋を開ける行為は、暗闇で保管されていた検体にどのような影響を与えるか分からない。
     ネイルの返答は、完全な嘘ではなかった。このような現象に、前例があるはずもない。腐敗せず、硬直もしない遺骸など……ただし「変わったことはない」という部分は、真っ赤な嘘だ。
     石室の標本はもう、標本ではない。さりとて、それを報告できようか? おそらく、上層部の判断で、もっと大きな研究所へ送られることになるだろう。戸籍もない古い時代のナメックが、「呼吸する標本」……良くて「実験動物」として扱われることなど、目に見えていた。
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