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    summeralley

    @summeralley

    夏路です。
    飯Pなど書き散らかしてます。

    ひとまずここに上げて、修正など加えたら/パロは程よい文章量になったら最終的に支部に移すつもり。

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    summeralley

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    #飯P版深夜の真剣お絵描き字書き60分一本勝負
    お題【ぬいぐるみ】

    #飯P
    #腐女子向け
    #二次創作BL
    secondaryCreationBl

    【飯P】真夜中に目覚めた時は 窓から覗く冬の三日月は、刃のように鋭かった。されども部屋の中は暖炉にあたためられ、燭台の灯りも手伝いほの明るい。
     ピッコロはベッドに掛け、サイドテーブルの隅にある小さなぬいぐるみを、見るともなしに眺めていた。
     「これ、まだ持ってくれてるんですね」
     悟飯はテーブルへ歩み寄り、ぬいぐるみを片手に持ち上げた。ピッコロはきまり悪そうに目を逸らし、捨てる理由がなかっただけだ、と呟く。手の中にあるぬいぐるみと、そのようなものに興味はないとでもいうように窓の外に目を遣ったピッコロとを見比べ、悟飯は声に出して笑った。
     「ずーっとそんな風に言ってますよ。もう何年も」
    「そんなことはない」
     ピッコロの返答は実に素っ気ない。だが、悟飯が握っていたぬいぐるみを取り上げて、テーブルの隅ではなく自分の膝の上へ転がした。
     ぬいぐるみは熊にも見えるし、猫にも見える。犬と言われれば犬だし、きつねと言われればきつねだ。何年もの昔、まだ少年だった悟飯が手ずから作り、師へ押し付けたものだった。
     その時の悟飯には、神殿の部屋はあまりに生活感がなくがらんとしていて、寂しい空間であるように思われた。「どこにいようとも、寂しさなど感じない」と言うピッコロの言葉が信じられず、半ば強引に渡したのだ。
     「僕だと思って、この部屋に置いてください。夜中に目を覚ました時なんか……僕のかわりに、ピッコロさんを、寂しさから守ります」
     緊張した面持ちでそう言った悟飯のことを、ピッコロもよく覚えていた。初春の午後、窓の外は薄雲の二すじ程たゆたうのみの晴天で、カーテンを揺らす風もあたたかかった。下らぬと切り捨てることも出来たはずなのに、縫い目の荒い不細工なぬいぐるみに毒気を抜かれ、素直に受け取ったそれをサイドテーブルの隅に立たせた。
     記憶を辿りながらピッコロは、膝に転がしていたぬいぐるみを無意識に弄んでいる。その指先が、横たわるぬいぐるみの背を慈しむように撫でるのを見て、悟飯はむっとする。例えぬいぐるみだろうと、生き物の形をしたものが、ああいった優しい手付きで触れられているのは面白くない。思わず、ぬいぐるみを再び取り上げる。
     「こんなに古くなってる。本当はもう手放したいんじゃない?」
     顔を上げたピッコロの口元が、かすかな沈黙のあと静かに撓んだ。どういう意味の微笑なのか分からず、悟飯は反応に迷う。刺々しいこちらの言い種にも、膝にあったぬいぐるみを乱暴に取り上げたことにも、少しも怒っていない。
     「……そうかもしれないな」
     ゆっくりと頷き、ピッコロはぬいぐるみを持った悟飯の手を引く。思わずベッドへ倒れ掛けた悟飯を抱き止めた。
     「夜中に目が覚めたとて、いつもお前がいるのだから、そいつを持ち続ける意味はない」
     ピッコロの腕が、静かに悟飯の背へ回される。悟飯はぬいぐるみを枕の下へ捩じ込み、なんとか押し潰さずにいた身体をそっと抱きしめた。ぬいぐるみのように撫でられるだけでなく、自らの意思で触れるために。
     家の裏手に広がる林には、うっすらと雪が積もっている。星凍る空はすでに晴れているが、寂しさを覚えるような静けさだ。けれど、二人で住み始めたばかりのこの家には、神殿のあの部屋のようなうら寂しさはなかった。
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    summeralley

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    ゆ 28b Summer alley

    新刊『廃墟の灯』
    A5サイズ10章68ページ成人向け。

    廃墟となった無人の街に暮らす飯Pのお話の試し読みです。
    03章を途中まで載せます。NAVIOの方には別の章を載せてますので、興味があって見れる方はそちらもどうぞ~
    【飯P】廃墟の灯/試し読み03.廃墟の街

     砂の散ったアスファルトに、錆びた鉄骨とひしゃげた鉄パイプが転がっている。
     山々のように聳える工場群は今やその役割を終え、徐々に朽ち果てつつあるのが、この距離から振り仰いでも明らかだった。
     ひび割れた舗道には雑草が繁り、道の両端に並ぶ建物の外壁にも蔦が這いまわっている。ガラスはどれも汚れており、庇はことごとく破れて垂れ下がっていた。看板やシャッターの文字はほとんど消え失せ、赤茶けた錆だけが無闇と存在を主張している。
     ピッコロが姿を眩ませたのは、両刃の剣を二人で見た直後だった。
     はじめ数日は、悟飯もデンデたちも、どこかで修業に打ち込んでいるのだろう、と考えた。しかし一週間経ち、十日経ち……それでも戻る様子がない。流石に、こんなに長い期間を留守にするのに一言も告げていないのはおかしい。気が全く感じられず、意図的に身を隠していることは明らかだった。
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    summeralley

    DONEこの人の内面はじめて書いた
    って思ったけどピアニスト飯Pの時に書いてました。あの時はネイPではなかっただけで。

    客🍚とマスター💅のバーテンダーぴ取り合い。ネイP描写多めで書きますがラストは飯P予定。
    【飯PネイP】煙るバーカウンターにて/12ラストワード テーブル席にウイスキーを出すピッコロを、カウンターの中から見ていた。一気に入った注文があれで片付くから、暫くは落ち着くだろう。
     コリンズグラスに、切ったばかりのライムとスペアミントを入れる。バースプーンで軽く潰すと、やや窄まったグラスの口から、涼やかな香りがここまで上がってくる。
     ライムは、通常のレシピよりも少し多く入れる。それがピッコロの好みだと、分かっているからだ。砂糖は入れない。氷を入れ炭酸水を注ぎ、手早く混ぜる。ちょうどカウンターへ戻ってきたピッコロに差し出すと、両手で受け取って笑った。
     「ありがとう、ネイル。足りないものはないか?」
    「今はない。何かあれば声をかけるよ」
     頷いて、カウンター客の前へ戻っていく。読んだ本の内容について、尋ねているらしい。それを受けた彼は身を乗り出すように研究を語り、ピッコロも微笑みながら聞いている。
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