駄文①side千#ゲ千 風邪①side千空
朝から気分は最悪だった
体中が鉛のようで
手足がひどく重く、喉も痛い気がする
首筋に吹き出す汗が気持ち悪ぃ
きっと疲労も溜まっていたに違いない
風邪を引いたと感じるのはいつ以来か…
まぁサルファ剤飲んどきゃ何とかなる
だからもう少しこの作業は進めておきてぇ
悲鳴をあげる身体を無視して作業に集中する
時は流れ
「はぁ…」
集中しなきゃいけない箇所は終わり、無意識に止めていた息を吐くと
ぐらりと視界がブレる
これはまずいと思った時は既に遅く
俺の意識はプツリと途切れた
「やっぱ風邪ん時は桃缶だよな!」
そう言って白夜は笑顔で缶詰をあける
その根拠はどこから来るんだか
風邪なんて経口補水液の水分と塩分、ブドウ糖取って寝てれば何とかなる
「風邪の時だけ…な!」
黄色い桃がゴロゴロと入った皿を突き出され俺は渋々口に運ぶと
ほわっと口の中に広がった
「甘……」
風邪の時だけのご褒美らしく、風邪をひくと必ず一緒に食べたな…
懐かしい…
でも、これは夢だ…
昔の…
ふとヒヤリと冷たいものが頬に触れた気がする
つめたくて気持ちがいい
「気がついた?」
そう声をかけられ
重い瞼を開けるとぼんやりとした視界
数回瞬きをして状況を理解する
「……」
何か言おうとしたが扁桃腺が腫れすぎて声が出ない
出そうとするとかなり痛む
そんな俺を見て、声の主はそのままでいいとジェスチャーしてみせ
「様子見に来てみたら、せんくーちゃんぶっ倒れてるしびっくりしたよー」
大袈裟に困ったように言うと、スっと表情を消し、俺を見つめる
「水、飲める?」
ダルい身体を起こして貰い、水を口に含む
じんわりと乾ききった口内に水分が広がるのが分かった
「いいから寝てて、風邪薬どこ?」
重い腕を動かしサルファ剤を指をさす
その場所をガサゴソと探し始めている姿を視界の隅で感じながら目を瞑ると
また俺の意識は闇に吸い込まれていった