嫉妬 #1「ねぇ、さっきのさぁ、馴れ馴れしい男誰?」
いつもより増して低い声が背後から降り注いだ。
浴衣の裾を乱暴に捲り上げられ、長い指でショーツの上から弄られ、大きな体が後ろから覆いかぶさった。
「…と、友達…中学の時のっ…あっ」
付き合って間もなく、
地元の神社のお祭りがあるからと
十亀くんに遊びにおいでよと
誘われたのは先週の話。
まだデートと言ってもお茶したり
食事をしたり映画や買い物と、
ごく普通のカップルだった。
彼は強いのに、物腰柔らかくいつも気遣ってくれる。だからあの時の顔を見た時、怖くて一歩も動けなくなってしまった。ぐいと腕を強く掴まれて神社の境内の裏に連れてこられ、さっきの蔑んだような眼差しで見下された。
「へぇ…〇〇ちゃんの同級生の男って、
みんなあんなに距離ちかいんだ」
「んんっ…そんな事ぉ…
はぁっ、はぁっ…な、無い」
ショーツのクロッチ部分をぐっと押し込められると
既に中からじわじわと湿り気を帯びて来ているのがわかる。腰あたりに彼のモノが押し当てられ益々逃げれない。
「あっ…あっ…十亀くんっ駄目っ…誰か来たらっ」
「ん〜?ここは誰も来ないよ。〇〇ちゃんが大きな声出さなかったらの話だけどねぇ」
「っあっ…、あんっ…」
浴衣の合わせも片手で剥ぎ取られ胸が露わになった。彼の熱い体温が背中から感じる。左手で下半身をまさぐり、右手で胸を揉みしだかれ声が勝手に漏れてしまう。
「はぁっ、はぁっ…あっ…」
「このままエッチしちゃおっかぁ?」
「あっ…だ、だめ…んんっ」
「さっきの男に見られたくないから?」
「あっ…ち、違う…違うよぉ…」
きゅっと乳首を摘まれ、ビクンと体を反応させてしまった。それに応えるようにショーツの隙間に人差し指が侵入し、既に垂れ流れはじめていた愛液を絡め取られた。
「はぁっ…〇〇ちゃんすごいねぇ、
もうこんなんになっちゃってたんだ」
「あっ…あっ…んっんっ」
「俺の指ふやけちゃいそぉ」
「あっ!ああっ…!」
ずぶずぶと長い指が膣壁を擦り上げる。
太くて気持ちよくてこれだけで達してしまいそう。
まだキス止まりだったせいで、十亀くんに荒々しく体を弄り回されて快楽を得てしまっている。
くちょくちょくちょ
下から水音がし、ショーツを太腿辺りまで脱がされると乳首をこねくり回していた手が首から顎に伸びて来た。
彼の指が唇に触れ口元をこじ開けるようにして、
指が歯に当てられた。
「んん…っ、はぁっ…」
「本当にただの同級生?」
耳元で囁かれて腰が砕けそうになった。どうしても
バレたくなかった。嘘を突き通して仕舞えば良いと思った私は間違いだったのか。
「はい、おまけ」
キラキラと水面の光が反射して十亀くんの優しい眼差しが光って見えた。たまにお祭りの屋台のアルバイトをしている彼は、今日は金魚掬いにいるからとチャットアプリにメッセージを送ってくれていた。
はやる気持ちを抑えきれず神社のたくさん並ぶ屋台を慣れない下駄で小走りにまわった。
小さな女の子が破れたポイを持ってガッカリしている目の前に座っていた十亀くんは、
こっそり新しいのを女の子に渡すと
〝こっちの小さな赤い子狙ってみて。
あとギリギリまで器を…〟と、
アドバイスをすると、女の子は真剣な目をして小さな赤い金魚を見事掬い取り、満遍の笑みをしてみせた。
「あれぇ、
〇〇ちゃんいつからそこにいたのぉ」
少し恥ずかしそうにこちらを見上げると、
はいと金魚掬いのポイを手渡してくれた。
さっき女の子に言っていた様に自分も出来るだけ小さな金魚を狙ってみるも、
あと少しのところで大きな黒い金魚が横入りし、
いとも簡単に破れてしまった。
「あ〜珍しいね。他のやつが横入りするとか」
「私センス無いのかも」
「〇〇ちゃんに
お持ち帰りされたかったんじゃ無い?」
「ふふふ、何それ」
「浴衣姿の〇〇ちゃん大人っぽいから」
持ち帰り用の小さなビニールに赤い金魚を入れてくれると
はい、おまけと言って十亀くんと手が触れた。
「後少しでバイト終わるから待ってて」
「うん」
急に大人っぽいとか言われて舞い上がってしまった。十亀くんに会える。お祭りデート。
浴衣も久々に着た。
一番に褒めてもらいたかったから胸がきゅうと心地よく締め付けた。
屋台を見てまわっていると、
ポンと肩を叩かれて振り向くと
中学生の時付き合っていた元彼が立っていた。
あまり良い思い出のない人。
女好きで結局浮気をされて別れた人。
「〇〇一人なの?」
「この後約束がある」
「じゃあそれまで一緒にいようぜ」
当たり前の様に肩を引き寄せられ、
タバコの匂いが鼻を掠めた。
「離して…」
「いいじゃん別に。てかさぁ、浴衣似合ってるね、マジで可愛い。なぁ、俺とまた付き合わねぇ?」
「何それっ、無理。無理だから私いま…」
「〇〇ちゃん」
背後から下駄の音がして
十亀くんがこちらに歩み寄ると
パッと手を離し、また連絡する、と
言い残し元彼はその場を去っていった。
「今の。誰?」
聞いた事のない低い声が降り注いだ。
つづく