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    韮山小田

    大体尻切れ蜻蛉

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    韮山小田

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    キスブラ身内ワンライ3 「甘い誘惑」

    「好きだよ」
    この男の常套句である。
    酒精に目の下を朱に染める姿はなるほど昼間の青白い顔よりも魅力的であった。
    男盛りの28という年齢、ヒーローという社会的地位、それなりに整った顔立ちに、骨に響くような低く甘い声。
    腰に手を回されて、付け根のあたりを撫でさすられる。暖かい色の照明の下で二人きり、膝を合わせるように並んで座ってそんな性感を煽るような仕草をされれば、プロの女でさえころりと身を任せるのかもしれない。

    しかしブラッドは初心な小娘ですらない。
    友人のごつごつした指が腰骨を弄るのにも、呆れて手を振り払うだけである。

    「眠いのならベッドへ行け」
    「え~…やだよ…」

    宙ぶらりんになった手を一瞬見つめたキースはしかし懲りてはいない様子だった。同性の友人に対して何が楽しいのか、酔ったキースは大体にしてブラッドにべたべたと絡んだ。
    出会った当初が嘘のようである。
    15のキースは周囲を小馬鹿にしたような目をしていて、それだけパーソナルスペースが広かった。
    しかし年月は彼のかたくなさに勝ったようで、30へのカウントダウンが終わりに近づいてもまだこんなことをしている。
    恋人でもあるまいし、他人に見られれば妙な勘繰りを与えてしまうからやめろと言ったことがある。
    人前ではやらないのだからいいだろうと丸め込まれた。
    確かに、問題といえば同僚でもある友人との関係について勝手な妄想をかき立てられるということであって、第三者がいない状況下では成立しない問題であった。
    快不快については、ブラッドは考えさえしなかった。

    「酒に弱いくせに、本当に懲りないな」
    ブラッドはワインを煽った。
    キースもまたワインを飲んでいた。ビールばかり飲んでいる印象が強いが、酒であればなんでもいいのだろう。それでも飲みなれない度数の強さに、ヘーゼルの瞳が焦点を失ったようにゆらゆら揺れている。
    まだ足腰がしっかりしているうちにベッドへ行かせるべきだ。脱力した男を支えるのは気が重い。サイコキネシスが少し羨ましくなった。

    いっそ家主に断ってベッドを借りるのもいいかもしれない。
    実のところ、酔ったキースにベッドまで肩を貸せば、必ずといって共寝することになる。ダブルベッドは男二人が並ぶにはそう余裕もなく、ソファで眠ると固辞すれば機嫌を損ねたように唸って腰を抱きこまれる。キースほどではないにせよブラッドも酔っているから、そうなるともう面倒でそのまま朝まで顔を突き合わせて眠ってしまう。
    発熱したような熱い肌に抱かれて眠るのは心地よいけれど、暖房の効いた部屋では汗をかいてしまいそうだった。朝起きて、寝乱れた体をシャワーで整えてからキースの部屋を去る。オレンジバニラの整髪剤は似合っていないとは思わないが、キースの匂いだと思えば首の後ろがむずむずと痒いような気がして、妙に集中できなくなるのが困りものだった。

    「ベッドを借りていいか」
    「オレはどうするんだよ」
    「そこで寝ていろ」
    「いいけど…ならお前ももここにいてくれよ」

    離さないというようにブラッドに体重が預けられる。
    似たような体格でものしかかられれば押し戻すのは困難だ。
    段差の少ないひじ掛けに頭がぶつかる。こうなってはもう諦めるのが利口だった。

    「熱い、重い」
    胸を圧迫されているから、自然文句は細くなった。
    「オレも熱いよ」
    ならどいてくれればいいのに。
    2枚の布に隔てられた体はなおもじっとりと熱かった。汗をかいているのかもしれない。
    声を出すのも煩わしいくらい、本当に苦しくて、どいてくれと露出した手を引いた。
    「…なに、欲しいの」
    湿った手に握り返される。
    「…何がだ」
    友人のいう事がブラッドには時々わからなくなる。
    手を握られるのも、体を求められるのも、口の中を舐めたがるのも。
    呼吸が荒くなった。

    繋いだ手が解かれて、ようやく体を起こしたキースに腹を撫でられる。
    女を口説く甘ったるい囁きはブラッドには通用しない。
    安っぽい告白よりも快楽よりも、欲しいものがあるかららしい。
    「早く気づいてくれよ」
    キースはそれを待っているようだった。
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    韮山小田

    DONEキスブラ身内ワンライ3 「甘い誘惑」「好きだよ」
    この男の常套句である。
    酒精に目の下を朱に染める姿はなるほど昼間の青白い顔よりも魅力的であった。
    男盛りの28という年齢、ヒーローという社会的地位、それなりに整った顔立ちに、骨に響くような低く甘い声。
    腰に手を回されて、付け根のあたりを撫でさすられる。暖かい色の照明の下で二人きり、膝を合わせるように並んで座ってそんな性感を煽るような仕草をされれば、プロの女でさえころりと身を任せるのかもしれない。

    しかしブラッドは初心な小娘ですらない。
    友人のごつごつした指が腰骨を弄るのにも、呆れて手を振り払うだけである。

    「眠いのならベッドへ行け」
    「え~…やだよ…」

    宙ぶらりんになった手を一瞬見つめたキースはしかし懲りてはいない様子だった。同性の友人に対して何が楽しいのか、酔ったキースは大体にしてブラッドにべたべたと絡んだ。
    出会った当初が嘘のようである。
    15のキースは周囲を小馬鹿にしたような目をしていて、それだけパーソナルスペースが広かった。
    しかし年月は彼のかたくなさに勝ったようで、30へのカウントダウンが終わりに近づいてもまだこんなことをしている。
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