このドキドキは何のせい?「───────なんだこの部屋は!!」
フェニックスワンダーランドを飛び出したオレたちは現在劇団を巡り、身体のつくりかたや表現方法を学んでいた。突然えむの兄達からワンダーステージで特別公演をしてほしいと話を受けたため、今日は類の家で台本と演出の練り合わせをする事になっていた。だというのに・・・
「おや?どうしたんだい司くん」
「どうしたもこうしたもないだろう!お前本当に片付けしたのか?!」
どう見ても、散らばっていたものを部屋の隅に追いやったようにしか見えないのだ。
「しっかりまとめてるよ。ここにはメンテナンスで使う部品があって、ここはこの前作りかけた掃除用ロボットが───────」
大きな荷物の山の左を指さしたと思ったら、次は右を指さす。どうやら種類ごとにまとめているらしい。
「ええい、元の場所に戻せばもっとガレージが広くなるだろう!台本は後回しだ、掃除が先!!」
「えー、せっかく司くんが来るから綺麗にしたのに」
「これは綺麗にしたとは言わん!」
そうして類とガレージの掃除をするのだった。
類は単純作業が苦手で片付けたという荷物の山から部品を見つけては、別の作業を始めようとするため大変だったがだいぶ部屋がスッキリしてきた。
「2人でやれば早いだろ?」
そう笑いかけるとなぜか類はこちらを見つめる。オレの顔に何かついているのだろうか。
「ああ、そうだね…」
ちょっと顔が赤い気もするが気のせいだろう。
次はちょっと重たい箱だが筋トレもしたかいがあったため、比較的楽に持ち上がった。
「この箱はあっちに運んでいいか?」
「大丈夫だけど司くん1人で平気かい?僕も持つよ」
「心配ない。日々鍛えた筋トレの成果をみせてやる」
類はヒヤヒヤした様子でこちらの様子を伺う。
オレはそんな類を気にかけていたため足元を見ていなかった。
「司くん!危ない!」
ちょうど掃除機のコードが足に引っかかり、バランスを崩す。頭だけは守らないといけないと受け身の体制を取り、衝撃に備え目を瞑った。しかしいつまでたっても痛くなかった。そっと目を開けるとそこには、見たことがないくらい焦った表情の類がいた。
「はぁ…っ…大丈夫かい?」
咄嗟のことだったが、類はオレの上に跨ったような状態で頭の後ろを支えてくれていた。
持っていた箱は潰されないように飛ばしたのだろう。少し遠くの方に転がっていた。
「すまん、大丈夫だ。それにあの箱落としてしまって…悪かった」
「そんなこと気にしなくていいんだよ。司くんが無事ならそれでいいさ」
そう言って貰えてありがたかった。が、近い。
いつもより近い類の顔を見つめると心臓が早くなっている気がする。それに押し倒されたような状況が恥ずかしい。
「…よかった。あ、あの類…よ、避けてもらってもいいか」
「ご、ごめんよ…あ、片付けも一段落したし休憩しようか、確かこの前貰った美味しいお菓子あったと思うからとってくるね」
オレの上から避けた類は早口で足早にガレージを出ていった。
部屋を出た類は、先程よりも顔や耳が心做しか赤く見えた。それまで部屋を片付けていよう。
お互いの顔が赤いまま、対面するまであと───────