例の夢を見た。体調を崩すと決まって見る、幼い頃の夢。
もう颯太との蟠りは解けたはずなのに、あの夢から解放されることはなかった。
アイツも俺との約束が心残りだった、約束を思い出す意志はあった。それを確認できただけで未練は失せた筈だろ。
心では分かっていても、俺自身の脳はあの記憶を呼び覚ますことを止めてくれない。
不快に思いながらべたつく首元の汗を拭う。控えめな電子音の後に取り出した体温計は、38℃を示していた。
「…本当に一人で大丈夫なのかい?エージェントに連絡した方が」
「いらねー」
静流はデカめのフェスの音響バイトに呼ばれて不在、ランスはこれから探偵の仕事で出るらしく、俺を残して全員が出払うことになった。
ガキじゃあるまいし、威張れることじゃないが体調を崩すのは慣れてる。寧ろ静かで寝るのに都合がいい。
1775