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    高間晴

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    高間晴

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    チェズモク800字。年下の彼氏のわがままに付き合ったら反撃された。

    #チェズモク
    chesmok
    ##BOND

    ■月と太陽


    「あなたと、駆け落ちしたい」
     ――なんて突然夜中に年下の恋人が言うので、モクマは黙って笑うと車のキーを手にする。そうして携帯も持たずに二人でセーフハウスを出た。
     助手席にチェズレイを乗せ、運転席へ乗り込むとハンドルを握る。軽快なエンジン音で車は発進し、そのまま郊外の方へ向かっていく。
     なんであんなこと、言い出したんだか。モクマには思い当たる節があった。最近、チェズレイの率いる組織はだいぶ規模を広げてきた。その分、それをまとめる彼の負担も大きくなってきたのだ。
     ちらりと助手席を窺う。彼はぼうっとした様子で、車窓から街灯もまばらな外の風景を眺めていた。
     ま、たまには息抜きも必要だな。
     そんなことを考えながらモクマは無言で運転する。この時間帯ともなれば道には他の車などなく、二人の乗る車はただアスファルトを滑るように走っていく。
    「――着いたよ」
     路側帯に車を停めて声をかけると、チェズレイはやっとモクマの方を見た。エンジンを切ってライトも消してしまうと、そのまま二人、夜のしじまに呑み込まれてしまいそうな気さえする。
     チェズレイが窓から外を見る。黒く広い大海原。時折波が消波ブロックにぶつかっては白く砕けるのが、薄明かりでわかった。
    「海、ですね」
    「それだけじゃないさ。ほら、空見て」
     言われたとおりに視線を上に向けると、見事な満月と満天の星があった。それを見てチェズレイは小さく感嘆の声を上げる。
    「こんなに綺麗な夜空、子供の時以来かもしれません」
    「満足してくれた?」
     そこでチェズレイはシートベルトを外すと、身を乗り出してモクマの頬にキスをした。柔らかい唇の感触に、なんだかこそばゆくてモクマは笑う。
    「……例えるなら、お前さんは闇夜を照らす月だ」
    「おや。月が輝くにはそれを照らす太陽が必要じゃないですか」
     チェズレイがモクマの耳元に口を寄せてささやく。
    「私の太陽は、あなたですよ」
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