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    高間晴

    @hal483

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    高間晴

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    「文体の舵をとれ」課題

    ##その他

    第一章『自分の文のひびき』問1「一段落~一ページで、声に出して読むための語りの文を書いてみよう」

     ※例:幽霊物語の山場
     ばりばり、ずるずる、ぐちゃぐちゃ。ありとあらゆる粘っこい音が鼓膜にこびりつく。その女が死体のはらわたを裂けた口で貪っている音だ。目から黒いヘドロのような涙を流しながら……。いや、それは涙ではないのかもしれない。怨念が形になって溢れてきたかのような、おどろおどろしい代物だった。あとからあとから流れ出てきて、とどまることを知らない。




    問2「一段落くらいで、動きのある出来事をひとつ描写してみよう」

     ハードケースの煙草からもう慣れた手付きで一本抜き取ると、口にくわえる。キーボードの傍にある使い古したジッポの蓋を開けると、親指でフリント・ホイールを鳴らして煙草に火を移す。煙を胸いっぱいに満たすと同時にジッポの蓋を閉めると、キン、と涼やかな音がした。度々感じることだが、それは喫煙に対する罪悪感を打ち消してくれるのだ。
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    高間晴

    DOODLEチェズモク800字。チェがモの遺書を見つけてしまった。■愛の言霊


     ヴィンウェイ、セーフハウスにて。
     昼過ぎ。チェズレイがモクマの部屋に、昨晩置き忘れた懐中時計を取りに入った。事前にいつでも部屋に入っていいと言われているので、こそこそする必要はない。部屋の中はいつもと同じで、意外と整理整頓されていた。
     ――あの人のことだから、もっと散らかった部屋になるかと思っていたけれど。よく考えればものをほとんど持たない放浪生活を二十年も続けていた彼の部屋が散らかるなんてないのだ。
     ベッドと机と椅子があって、ニンジャジャングッズが棚に並んでいる。彼が好きな酒類は「一緒に飲もう」と決めて以来はキッチンに置かれているので、その他にはなにもない。チェズレイはベッドサイドから懐中時計を取り上げる。と、ベッドのマットレスの下から何か白い紙? いや、封筒だ。そんなものがはみ出している。なんだか気になって――というよりは嫌な予感がして、半ば反射的にその封筒を引っ張り出した。
     その封筒の表には『遺書』と書かれていたので、チェズレイは硬直してしまう。封がされていないようだったので、中身の折りたたまれた便箋を引き抜く。そこには丁寧な縦書きの文字が並んでいて、そ 827