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    高間晴

    @hal483

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    高間晴

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    「文体の舵をとれ」課題

    ##その他

    第一章『自分の文のひびき』問1「一段落~一ページで、声に出して読むための語りの文を書いてみよう」

     ※例:幽霊物語の山場
     ばりばり、ずるずる、ぐちゃぐちゃ。ありとあらゆる粘っこい音が鼓膜にこびりつく。その女が死体のはらわたを裂けた口で貪っている音だ。目から黒いヘドロのような涙を流しながら……。いや、それは涙ではないのかもしれない。怨念が形になって溢れてきたかのような、おどろおどろしい代物だった。あとからあとから流れ出てきて、とどまることを知らない。




    問2「一段落くらいで、動きのある出来事をひとつ描写してみよう」

     ハードケースの煙草からもう慣れた手付きで一本抜き取ると、口にくわえる。キーボードの傍にある使い古したジッポの蓋を開けると、親指でフリント・ホイールを鳴らして煙草に火を移す。煙を胸いっぱいに満たすと同時にジッポの蓋を閉めると、キン、と涼やかな音がした。度々感じることだが、それは喫煙に対する罪悪感を打ち消してくれるのだ。
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    高間晴

    MAIKINGチェズモクの話。あとで少し手直ししたらpixivへ放る予定。■ポトフが冷めるまで


     極北の国、ヴィンウェイ。この国の冬は長い。だがチェズレイとモクマのセーフハウス内には暖房がしっかり効いており、寒さを感じることはない。
     キッチンでチェズレイはことことと煮える鍋を見つめていた。視線を上げればソファに座ってタブレットで通話しているモクマの姿が目に入る。おそらく次の仕事で向かう国で、ニンジャジャンのショーに出てくれないか打診しているのだろう。
     コンソメのいい香りが鍋から漂っている。チェズレイは煮えたかどうか、乱切りにした人参を小皿に取って吹き冷ますと口に入れた。それは味付けも火の通り具合も、我ながら完璧な出来栄え。
    「モクマさん、できましたよ」
     声をかければ、モクマは顔を上げて振り返り返事した。
    「あ、できた?
     ――ってわけで、アーロン。チェズレイが昼飯作ってくれたから、詳しい話はまた今度な」
     そう言ってモクマはさっさと通話を打ち切ってしまった。チェズレイがコンロの火を止め、二つの深い皿に出来上がった料理をよそうと、トレイに載せてダイニングへ移動する。モクマもソファから立ち上がってその後に付いていき、椅子を引くとテーブルにつく。その前に 2010