勝手にしてろ「あの、リリカ・ダイダスさん……ですよね?僕の名前はアルマ・シャルルと申します。」
「はい、そうですが。何か御用ですか?」
フルネームを呼ばれて、ふと振り返る。
そこには少し顔を合わせた程度の職員が立っていた。
貴方がカイル・ダイダスの親戚であることを知りまして
イルちゃんの記録があれば閲覧させていただきたく……
目の前にいるカイルの記録の閲覧を申し出た目の前の職員をじっと、観察してみる。
彼はアルマ・シャルル、童顔に似合わない大鎌を振り回すAg:47職員。どうやらかなり女性職員に人気だとどこかで聞いたことがある。
風の噂でカイルがバディを組んだと聞いたが目の前の彼だったか。
「カイル・ダイダスの記録ですか。承知いたしました。閲覧方法をお教えいたします……ですがその前に。」
ぐっと眉根を寄せる。
最近は減ったと思った私の大嫌いなフルネームを呼んでくる相手に、カイルの(おそらく今後なるであろう)契約相手に。
「今後私の姓を呼ばないようお願い申し上げます。リリカで結構ですから。では、説明いたします。」
姓を呼ばないよう忠告して端末に向き直る。
「基本的には共有データベースにて確認が出来ます。自分の端末にてログインをしてダーリンの記録一覧から検索をかけてください。製作者を私の名前で絞ると出てきやすいと思います。編集にはロックを掛けているので、情報を入手した際には私に報告願います。あぁ、それとデータは随時更新しておりますので定期的にチェックしておくといいと思います。……こんなところですかね。なにかご質問はありますか?」
「特にはありません。ありがとうございます。」
「あと1つ、差し出がましいようですが。」
すぅ、と息を1つ。
「あれには入れ込みすぎないように。」
「……あれとは、イルちゃんの事ですか?」
相手の声音が少し不愉快そうなものに変わる。
これはもう入れ込んでいるな、と直感が告げる。
「不愉快に感じましたら申し訳ありません。ですが、忠告は致しました。では私はこれで。」
端末を閉じて軽く一礼をし、私はその場を離れる。
必要かどうかで言ったら、不要寄りの忠告だ。
ただ、こうもあれを思いやる相手がいることをが不愉快で。
無性にむしゃくしゃした。
パタパタと足取り早く寮に帰り無造作に部屋を開ける。
「おかえりリリカちゃん。どうしたの?」
「エリー!今日のご飯は大盛りでお願い!何故だか無性に食べたい気分なの!」
私は知らない、あんなヤツのこと。
むしゃくしゃなんてするものか。
勝手にしてろ!