仮題 今日のわんこ ふわふわの髪に指を差し込み、両手でわしゃわしゃと撫でる。
「よしよ〜し、いい子ね〜」
「おいいい加減にしろよ」
私の目の前のいい子、彰人は迷惑そうにその手を退けようとする。
「なんでよぉ。いーじゃない、かわいいおとーとをよしよししたって!」
「よくねぇ。オレは犬じゃねぇ」
顰めっ面。かわいくない。でもそんなところもかわいい。込み上げる感情を抑えることなく、目の前の弟にぶつける。
「ふふ、かわいくない」
「おい!」
おでこをくっつけるように引き寄せて、犬と戯れるように首や耳の後ろを撫でる。そしてこのかわいいわんこ、じゃない、弟にちゅうを贈るべく顔を引き寄せる。しかし。
「やめろ酒臭い」
「あっちょっと! なんでにげんのよ! ちゅーさせなさいよ!」
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