フベラファ/満月色フベラファ
「満月の夜が特に好きだ」
理由はこの目でも星々がよく見えるらしい。きっと僕とフベルトさんの見えている景色はかなり違うのかもしれない。拷問で視力が弱くなったと聞いていたけれど実際にその視力で観測をした事がないから想像しにくい。
「そうなんですね」
「君の目なら普段よりも眩しく見えるのではないか?」
幸いにも視力は良い方なので、そう言われると眩しいと答えた方が無難だろうか?でも眩しくないと答えてもフベルトさんなら嫌味で言われているんじゃないと分かってくれるかも。眩しいと言えば眩しいし、眩しくないと言えば眩しくない。結局どちらでも良いんだ、僕の中では。と思っている自分は実に冷めている。こんなに真剣に考える事でもないのにフベルトさんからの問い掛けには馬鹿正直に答えたいという感情が溢れてしまう。褒められたい、認められたい欲求が生まれてくる。それはポトツキさんや学友達に褒められて嬉しい感情とは異なるかもしれない。天文に精通した人に対しての憧れの一種だ。これまで関わってきた人達とはまるで別物、地平線から登る時に見える少し赤~オレンジ色に映る月の様なゾクゾク感。一字一句が僕を虜にさせる。夢中にさせる。これは何と例えれば伝わるだろうか?きっと僕にしか分からない感覚かもしれない。
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