氷華、祈りて捧ぐ 白の空気は寥々として澄み渡り、ちぎれた雲からはらはらと落ちるように雪花が舞う。風に煽られた羽織りがひらりと翻った拍子に、ひとつにまとめられた冬の海の色を映した癖毛がふわりと揺れる。紗をかけたように白く塞がれた空に映えるその色は、毛先が淡く透けて空の色を映している。
空は雪音を吸い込むような白に染まり、薄っすらとその白に淡紫色の朝の光を滲ませて、吐息を集めるように風が雪を踊らせていた。微睡を残したままの空の端には、きらり、夜の名残の煌めきがその光を湛えていた。
「……意味なんてなくても、いつか終わるその日まで、」
バルコニーの手摺りに凭れ掛かり空を見上げていたフィガロは、そっと手を伸ばし、広げた手のひらに落ちる星屑のような雪の欠片を見つめていた。防寒魔法の掛けられた白くあたたかい手のひらの上で、雪の結晶がはらりと咲いて、咲いて、じわり、溶けていく。
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