無題「好き」
結局たったその二文字の言葉が口に出せなくて、たくさんたくさん、悲しい気持ちにさせてしまった。
あの人がアイドルを辞めてモデル業に専念するって言った時も、僕には引き止めるなんてことは出来なかったし、
「俺はゆうくんの事が世界で一番好きだよ。ゆうくんは?」
って言葉にもきちんと答えることは出来なくて、
「…ごめん」
精一杯絞り出したその言葉はどれほどあの人を傷つけてしまったのだろう。一緒に居られる最後の日だったのに、あの人のあんな表情が見たかった訳じゃなかったのに。
その後は何だか雑誌であの人を見る度に心が罪悪感で押しつぶされそうになってしまって、いつしか毎日見ていた雑誌を買うのも辞めてしまった。
あの人はどこで何しているんだろう、謝りたいな。今度こそは、僕の気持ち、伝えてあげないと。そんなことを思っていたはずなのに、会えなくなってしまってからもう七年も経ってしまった。まだ僕の心はあの人にあるのだろうか。
1982