いい夫婦の日@長七「……そう言えば」
と、七緒がおもむろに声を上げたのは、冬の気配が近づき始めた晩秋の昼下がりのことだった。
筑前は名島の城。七緒が長政の元に輿入れをしてきて、しばらくの頃だ。
漢書を読んでいた長政は、七緒の方に顔を向けて首を傾げた。
「何だ」
「……今日、十一月二十二日ですよね」
七緒の言葉に、長政は「ああ」と頷く。令和の世では、日付と同じように月も数字で数えるのだという。霜月は十一月と呼んだそうだから、令和風に言えば確かに今日は十一月二十二日だ。
「それがどうした?」
聞き返した長政に、七緒が笑みを浮かべる。
「思い出したんですけど、十一月二十二日は、令和の世では『いい夫婦の日』だったんです」
「いい夫婦……。なるほど、語呂合わせか」
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