rnbcで初夜「ん? なんて?」
それまで出来上がっていた甘い空気を一刀両断する蜂楽の素っ頓狂な声に、流れを止められた凛はわかりやすくて眉間に皺を寄せた。とはいえ止まる気などさらさらないので、ソファに押し倒した蜂楽に顔を寄せ首筋にキスを落としてから耳元に息を吹き込んだ。
「……したい」
それは凛の希望であり同時に凛の中では決定事項だった。恋人という関係にあり普段自分以上にスキンシップも好む蜂楽が拒絶するなんて一切想像もせず、凛はやや強引に押し進めようと蜂楽の服の中に手を突っ込んで優しく腹を撫でた。ん、と蜂楽から甘い声が漏れる。凛が想像したものよりも甘く艶やかな声色にもう絶対に読まれる気がしなかった。だが、そんなやる気に満ち溢れた凛を再び制したのは蜂楽のトンチンカンな一言だった。
「凛ちゃん……もしかして興奮してるの? 俺相手に?」
「……あ?」
状況を理解した上でなぜそんな言葉がこぼれるのか。正直意味がわからない。何を今更。むしろこの展開に発展するのが遅すぎたくらいだ。蜂楽は良くも悪くもノリが良いヤツで、冗談も平気で口にする。だとしてもだ。この盤面においてそれは、悪い冗談にも程がある。呆れる騒ぎじゃない。沸々と湧き上がる興奮、それに引っ張られるように情緒はあっさりと怒りを爆発させる。今のは絶対に蜂楽が悪い。
「ふざけんのも大概にしろよ」
「だって。え? 本当に?」
「……」
蜂楽の目に動揺の色が見える。お調子者だがこれは自分を揶揄ってるとは到底思えない。ともすると、蜂楽は現状に本気で驚き困惑してることになる。ついさっきまで腕を回し何度も角度を変えながらキスをしていた恋人に押し倒されて。自然の流れのままそういう行為に進もうとした凛に待ったをかける。流石の凛も動揺し始めた。今は絶対そういう雰囲気だっただろう。お前も確実にそれを望んでる。そう信じて疑わない分余計に蜂楽の瞳に揺らぐものにショックを受けた。コイツは俺とは違うのか。
「俺は、ずっとしたいって思ってた。テメェは違うのかよ」
正直聞きたくない。否定や困惑の声は絶対に。恋人のゴールや目的がセックスとは言わない。だが、少なくとも互いにそれを許しせる関係だと凛は認識していた。だからこそ、そんなこと言われたら自分たちがなんなのかわからなくなる。だから聞きたくない。けど、聞かざるを得なかった。
「……俺は、俺もしたい、かも?」
「なんで疑問系なんだよクソが」
「だって。凛ちゃんが俺に対してそういうこと考えてるって本当に思わなかったから……」
凛ちゃんが俺に興奮して、えっちしたいって思ってくれてるなんて。想像もしなかった。だってもう一年も付き合っててこんな感じになったことなかったから。俺は男だし、おっぱいもないし、柔らかくて良い匂いもしない。女の人じゃない。だから……。
ぽつぽつと、蜂楽は自分の胸の内を吐露していく。珍しく深刻な様子で語る蜂楽には悪いが、凛はそんな蜂楽の言葉を同じ肌感で受け取ることができず、不謹慎にもいっそう興奮を高めていた。可愛いなんて絶対口にはしないが、今の蜂楽は間違いなく愛らしく愛しい。あまりそういうことを深く考えるタイプじゃないと思っていた。自分たちが恋人関係を結ぶ際、自然の流れのまま互いに受け入れてどうなったから。言いたい時に好きを口にし、ハグやキスを好みくっついてくる。そんなこいびとがまさか性別がどうこう思い悩んでるなんて思いもしなかった。恋人相手に性的興奮を覚えているとは思わなかったと言われたのに。その衝撃は怒りやショックや申し訳なさではなく全て性的興奮へと変換されていく。やっぱり抱く。今すぐ。絶対。それでそのぬるい考えがいかに愚かでバカであるかわからせてやる。存分にぶつけてやりたい。今もなおガチガチに硬くなる局部を蜂楽へと押し付けながら「バカかテメェは」と吹き込みなにか口にしようとした蜂楽に弁明の余地も与えず凛は深く口づけた。
触れ合うだけの可愛いものじゃない。互いの粘液を絡め合い溶かしどちらのものかわからないほど境界線をなくしていく。のちにここでははない場所で繋がってもっともっと深く奥へと侵入し啼かせてやる。テメェが誰のものか。自分がどれだけこういう行為に焦がれていたのか。そして、お前がどれだけ俺を求めていたか。全部。今わからせてやる。
「抱く」
「……ん、はあ、まって……あ!」
「単にシーズン中は体が資本だからって泳がせてやってただけだ。それでクソみてえなこと考えてたテメェの考えを今から全部塗り替えてやる」
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記念日でも誕生日でもない。ただのオフシーズン中のある日。凛にとっては急でもなんでもなく、たまたまタイミングが今だっただけだけど、蜂楽にとってはそうではなくてただただ動揺するイメージ。ただし蜂楽も凛が自分に興奮するって知らなかっただけで、凛と繋がれるならどこまでも深く愛し合いたいタイプ。
りんばち初夜のイメージでした!!
互いの認識にすれ違いがあっても凛は強引に進めるし(蜂楽が自分を好きである自信はある)、蜂楽は驚きつつも求められるのが嬉しくてあっさり受け入れてしまう
どちらも初めてで本番は少しドギマギするが絶対にやめない凛のエゴサを浴びたい。
素敵なリクエストありがとうございました!!!
年齢制限を含むような描写がなくて申し訳ありません。
少しでも楽しんでいただければ幸いです!