isbcで姫納めと姫はじめ※isbcプロ軸(isg→ドイツ、bcr→スペインを拠点にしてるイメージ)
※isbc恋人設定
※isbcは少なくとも二十歳以上なイメージ
----------------
少し熱めの風呂に足を浸けゆっくりと体を沈める。ひんやりとした冬の寒さとの温度差で湯加減がいっそう心地よく感じ思わずふうと息が漏れる。年の瀬に露天風呂だなんて、きっと自分では到底思い付かなかったであろうアイディアをもたらしてくれた恋人に感謝しかない。
年末年始はほとんどのプロリーグが休暇に入るため、遠距離恋愛中の恋人である蜂楽と過ごすのには絶好の時期の一つだ。去年里帰りしたから今年は年末年始は二人で過ごそうと約束していたが、その内容までは漠然としていて。俺としては蜂楽と一緒に過ごせればなんdwもよかったが一応何か要望があればと思い問いかけた。イベント行事を好む無邪気な恋人は新年の始まりをどんな風に過ごしたいのか。もしかしたらハワイで年越、なんてこと言い出すかもしれない。蜂楽ならありえると思いつつ「年末年始はどうする?」と通話アプリを通して聞けば、画面越しの恋人はわかりやすく腕を組んで唸ったかと思えばポンッ、と手を叩いた。
「温泉行きたい!」
「温泉?」
「そう!寒い時期には温泉であったまってさ、露天風呂で泳いだりクリームソーダ飲んだりしたい!」
「なるほど……」
全く予想だにしなかった提案だがとても素晴らしいなと思った。年越しを日本のどこか温泉が有名な観光地で過ごす。露天風呂付きの個室を予約すれば人目を与する必要もない。年が明けたら近くの神社で初詣に行き、あとはゆっくり過ごす。悪くない。なにより、恋人と温泉旅行はベタというか、普通の憧れがあるし、蜂楽の浴衣姿も見たい。二人っきりで露天風呂に入って年を越すなんて今まで経験したことも思いつきもしなかった。特別感がある。
「じゃあ、年越しは日本で過ごそう。蜂楽どこか行きたい場所ある?」
「うーん、よくわかんないけど。温泉が有名などっか!」
「俺が決めちゃってもいい?」
「むしろお任せしていいの?」
「じゃあとっておきの場所用意するから楽しみにしてて」
「にゃはは!潔ってばスパダリってやつだ!楽しみにしてる!」
きっと蜂楽の頭に露天風呂付きの個室なんて選択は浮かんでない。単純に温泉に入りたいと、なんなら蜂楽と俺の横には猿が並んで一緒に風呂に入ってるような、そんなファンシーな想像してる可能性すらある。そういうとこを可愛いと思うけど、どうせなら久しぶりに二人で過ごせるのだから存分に恋人を独り占めしたい。そんな下心と、単純に蜂楽が目をキラキラと輝かせて喜ぶところが見たいがために場所決めや予約を承ることにした。母さんならその辺のことに詳しいと思うし。
そんなこんなで観光地で、かつ、きっと蜂楽が行ったことなさそうな場所、せっかくだから奮発してお高い露天風呂付き個室のある旅館を予約した。曲がりなりにもプロサッカー選手であるので顔が割れてる可能性もある。そういった情報漏洩を防いでくれそうなところを選んだつもりだ。
実際蜂楽はその旅館を目の前にした途端に目を輝かせ、部屋に案内されてる最中は足取り軽く、部屋に通された後は子供みたいに室内探検を存分に楽しんだ末見つけた露天風呂に、その場で裸になって飛び込むくらいには喜んでいた。
この露天風呂に入るのはこれで二回目。まさかこれ早々飛び込むことになるとは思わなかったけど、蜂楽が喜んでたなら十分。軽く風呂に入り浴衣に着替えて温泉街を歩いた。土産屋で買ってきた饅頭はすでに箱が空いており、明日お代わりを買いたいと騒ぐほど蜂楽は気に入っていた。俺もあんこが好きなので賛成だ。
年越しを露天風呂で過ごす。
本当は豪華な夕飯後、部屋に備え付けのテレビで特番か紅白を見て時間を潰すつもりが、どうしても旅行という浮かれシチュエーションと、酒で少し赤らんだ浴衣姿の蜂楽に我慢できず今年最後のセックスに夢中になって。年越しを過ごすためだけではなく汗を流すためというちゃんとした目的まで追加された入浴となった。
「潔〜いい湯だねえ」
「そうだなあ〜、めっちゃ癒されるわあ」
「にゃはは!これじゃあ気付いたら年明けちゃうんじゃない?」
たしかに。一応ジップロックに入れたスマートフォンで確認すればもう間もなく今年が終わる。耳をすませばどこからか除夜の鐘が聴こえる気がする。108の煩悩を打ち消す。その音に耳を傾けながら隣でふにゃりと蕩けた恋人を盗み見る。触れ合うの自体久しぶりで、まだ早い時間なのについ盛ってしまった自覚はある。だが、蜂楽の露出した首や鎖骨に刻まれた情欲と所有の証を目の当たりにすると、我ながら……と、苦笑いが溢れる。なにがやばいって。まだまだ存分に二人でゆっくりできると思うと、あれだけじゃ足りないって脳が心臓が、腹の底に溜まった熱と。それから局部が訴えてくる。これじゃあ猿だ。なんて、自嘲しつつ俺のスマホを覗き込んできた蜂楽が「あと一分!」と声をあげたので、なんだか愛しくなって蜂楽の肩に寄り掛かった。
「潔?」
「はあ……幸せ」
「にゃは。うん、俺も、今年と来年の境界を潔と一緒にこーんなすごいお風呂で越えられるの嬉しい!予約とかありがとう!」
「どういたしまして。といっても、やりたくてやったわけだし。実はここ、玲王の紹介で予約取ったんだよ。だから年明けたらアイツにもお礼言おうな」
「玲王っちはこっち帰ってきてるの?」
「ああ、そうらしい」
「わー!!じゃあ一日くらい予定合いますかな?」
「あー、聞いたけど忙しいみたい。玲王に残念がってた。また改めてみんなで集まろうって」
楽しそうにはしゃぐ蜂楽には悪いが、せっかく二人で過ごせる年末年始だ。今回のスケジュールは全部独占させてほしい。蜂楽は新しくできた仮の予定に楽しみだと笑ってから「あ!」と叫んだ。
「ハッピーニューイヤーだ!」
「あけましておめでとう」
「あけおめー!潔、今年もよろしくね」
「もちろん。こちらこそ、今年もよろしくな」
備え付けの冷蔵庫にはメロンソーダのペットボトルにバニラアイスが用意されている。蜂楽が言っていた「お風呂でクリームソーダ」を実現するための準備はバッチリだけど、これは次の入浴まで待ってほしい。
「蜂楽、」
「なあ、んっ!」
なあに、って言いかけた蜂楽の声ごと全部ペロリといただきます。やばい、さすがでここでヤるのはマナー違反だから。早く上がって布団に直行したい。もう何度だって見てきた裸、それこそ青の監獄時代は毎日のように全裸姿を見せられていた。あの頃の俺は日々のトレーニングや心身的プレッシャーでそれどころじゃなかったとしても。やっぱ幼かったんだなと思う。今のシチュエーションの影響が強いのはわかっているけど、今蜂楽といちゃいちゃしたくて仕方ない。逆上せそうなのは温泉だけが原因じゃないはずだ。
柔らかく湿った唇を解放する。スイッチはあっさり押されたようで、蜂楽はもう物欲しそうな表情で瞳を揺らしていた。
「逆上せる前に上がろうか」
「……うん」
そんな紳士ヅラしながら、これから目一杯自分に溺れる恋人を堪能しようと画策してる。はあ、本当年明け早々煩悩まみれだ。
ひと足先に立ち上がり蜂楽の手を取る。二人で手を繋いで風呂から上がると冬の夜風が体を一気に冷やす。それでもこの滾りは到底治ることを知らないようで。冬の冷たさも今の俺には丁度いいくらいだった。
---------
姫納めと姫はじめ。isbcが温泉の隔離された場所で存分に堪能していたらいいなと思いました!!
素敵なお題ありがとうございます!!
少しでも楽しんでいただけましたら幸いです!