「ユウってさめちゃくちゃ行儀良いよな」
「え」
「確かにエースの言う通り常識知らずなのにカラトリーの使い方も綺麗だ」
「そうかな…」
「僕もそう思うよ」
「寮長!」
「ユウは背筋が伸びていて品がいい」
「…ありがとう、ございます」
「…僕は行くね」
「あはい」
「ユウどうした?顔色わりーんだゾ?」
「そうかな」
「体調悪いなら一度医務室に行くか?」
「あー…うん、そうする」
「……ユウってさ、寮長苦手っぽいよな」
「は?なんでそんな話になるんだゾ?」
「グリムも見てたろ、あの硬くなる表情 寮長が他寮の生徒、しかもオバブロ騒動にいたユウに何かすると思えねーし」
「考えすぎじゃ無いか?」
「だったら一番いいんだけど、さ!デュースのタルト貰い!」
「おい!それはさっきじゃんけんで勝って取ったやつなのに!意地汚ねぇぞエース!」
「お前ら、騒がしー奴らなんだゾ…」
「「お前に言われたくない!」」
前にいた世界で父に厳しく育てられていた監督生。父は難しい人で母にも当たりが強くその分割と穏やかな監督生に依存していた。そのせいでカラトリーの使い方が綺麗だと母とても褒めてくる。監督生も自分に依存して欲しいのか監督生を構い倒す始末で監督生は嫌気が指してくる。結局行儀は良くなったが褒められるのにかなり抵抗がある。リドルはなんとなく小柄で監督生の母に似ていることから意識的に避けがちに。本人は何も悪くないがリドルは自分が何かしたのか不安でとうとうトレイに相談。トレイが間接的に聞いてみるも答えず結局謎のままになる。誰かに依存するのが怖くてマブとも軽く一線を引いている。知らない世界に連れてこられててんやわんやしてるくせに誰にも頼らない為、限界が来て熱を出す。目の前で倒れた監督生にグリムが慌ててマブを呼びに行き、ハーツラビュルへ。マブがリドルに事情を説明して療養をハーツラビュルで取ることになる。その間、マブとグリムで看病するも中々よくならず、今度はグリムが自己嫌悪を始めるのでリドルがマブ(こちらも参り始めている)にグリムと一緒に少し看病から離れるように言ってトレイと看病を引き受ける。薬の調達等をリドルが行い食事や水をトレイにしてもらっていた。ある日トレイが「今手が離せないから薬と水を持っていて欲しい」と頼むリドルは嫌がったが、トレイに困り眉で監督生が寝ているから大丈夫だと言われると渋々部屋へ向かった。部屋は真っ暗で苦しそうに息をする監督生の横に立ってお盆を机に置くと、リドルが監督生の額に手を置こうとする。しかし手を叩かれてしまい悲しくなって部屋を出ようとすると
「母さん…」
と掠れ声がリドルを引き留める。
「ごめんなさい、違うんだ、母さんが嫌いなわけじゃ…」
半覚醒のようで目を開いてリドルのブレザーを握っているが、その瞳に光はない。リドルは監督生の口から初めて彼の家族の名前が出てきて驚きつつ同時に監督生の抱えているものを理解する。
「君は僕と同じものを抱えていたのか…さぞ怖かったろうに」
同情ではなく、純粋に母を好いてはいるが同時に少し恐怖を抱いているその気持ちをとても理解しているリドルだからこそ監督生の手を迷いなく取った。
「大丈夫、僕は君に何もしない。唯仲良くなりたいんだ。だから早く、体調を戻して」
その願いあってか次の日監督生はようやく回復の兆しを見せ始め、その2日後にけろりと学園でいつも通り過ごすようになっていた。それからしばらくしてリドルはマブ伝いに監督生を個人的な茶会に呼んだ。ビクビクしながら来た監督生にリドルは優しく声をかける。
「えっと…」
「そこに座って。今紅茶を淹れよう。今日はお茶会に君を呼んだんだから」
ゆっくりとした動作で怯えさせないように紅茶を淹れて、監督生の前に置いたリドルは少しおいてから話を始めた。
「ユウ、まずは体調が良くなって良かったよ」
「ありがとうございます…リドル先輩には迷惑かけて…」
「構わないよ。承知の上でここでの療養を許可したのだから。それより、一つ聞いてもいいかい?」
「はい?」
「君は、多分僕が苦手だよね?」
「…」
「別に攻めてはいないさ。僕も苦手な人がいるから。今まではそれでいいと思ってた。でも君が寝ぼけて僕を母さんと呼ぶから、聞かなきゃいけないと思って」
「そんな事言ってました!?」
「あぁ。…その後、謝られたよ。僕に対してではないけど。」
「…すみません」
「構わないよ。それで、君は僕がオーバーブロットをしてしまった時に居合わせていたね。話は聞いていただろう?」
「はい…」
「同族探しみたいで気分は良くないんだけど僕は君と仲良くなりたいんだ君の気持ちは痛いほど理解できるし、僕と似ている所も多いと思うんだ。母親を嫌いなわけじゃない所も。」
「!」
「だから、君が嫌じゃなければ君の傷みを分けて欲しい。僕は傷みを強引に分け与えてしまったから。」
「それは…」
「例えオーバーブロットのせいだとしてもそれを招いたのは僕だ」
「…」
「君とは仲良くなりたい。僕の寮のエースやデュースと仲良くしているのを見ていつも羨ましくなるんだ。楽しそうで。」
「…僕も別にリドル先輩が嫌いなわけじゃ、ないんです…唯どうしても母さんに被ってしまう」
「理解してるよ」
「ちょっとまだ、心の整理がついてないですけど、できたら、聞いてくれますか?」
「……勿論だよ。」
その後、リドルは監督生に普通に話しかけるようになり、監督生も最初は緊張したり目を合わせられないけどリドルがそれでも話しかけてくれるから時期に慣れてちゃんと友達になって、自分のことについても話せるようになる
監督生♂とリドルのお話。