銀高ss⑤今日は待ちに待った日。1週間の労働を耐え抜き、ようやくやってきた特別な日。そう、今日は花の金曜日。二日間の休みが俺を待っている。だが重要なのはそこではない。
今日は、大事なだいじな恋人の高杉が泊まりにくる日である。
「…おじゃまします。」
「おー入って入って。適当に座ってていいから。」
一度帰宅して、制服から私服に着替えた高杉を出迎える。見たことない服だ。新しいやつか?
高杉は行儀良く靴を揃えて、するりとリビングへ向かうと、勝手知ったる様にソファへ腰掛けた。
週末のお泊まり会は何度か開催したことがあるし、おうちデートも経験済みだ。
毎日顔を合わせていても、学校では積極的な接触ができない分、こうやって高杉だけを思う存分堪能できる機会は貴重で。予定が入れば毎回ウキウキと心を躍らせている。
「もうすぐ飯できるから。」
「…ん。」
「なあに、緊張してんの?随分大人しいじゃんか。」
クッションに顔を埋めてふん、と鼻を鳴らした姿が可愛くて、思わずくしゃりと頭を撫でてしまった。
ばしって、はたき落とされた。
リクエストに応えた夕飯を食べて、一緒に風呂入って。(風呂の中でイタズラしたら湯に沈められかけた。)
そして、しっとり濡れた髪の毛を乾かすボーナスタイムへ。この為に厳選したオイルを毛先に適量塗り込んで、熱くない様に乾かしてやる。男にこんなものいるか?と高杉は首を傾げたが、俺がやりたいから。とお願いすればまあいいかと、されるがままになってくれている。こういう所好きなんだけど、他の奴にもうっかり流されたりしてないか心配になる。
水分のほどよく飛んだ髪を整えてやりながら、高杉を観察する。
俺の家で、俺が作ったものを食べて。着替えだって俺のやつで。お風呂へ一緒に入って、髪もツヤツヤにして。
自分が手をかけたものって、ものすごく、いい。
なんとも言えない気持ちになって、うるツヤの頭に顔を埋めた。
「おい、何してんだ。」
「いや…ちょっと高杉くんを吸い込んでる…。いいにおいだね…。」
「お前と同じシャンプーだろ。さっさと布団行くぞ。」
無情にも俺の裏から抜け出した高杉はすっと立ち上がり、さっさと布団へ寝転んでしまう。
もうちょっと吸いたかった…と少々残念に思いながら、ベッドへ向かう。ごろんと布団の真ん中に寝転んだ高杉。あれ、俺の寝るスペース、ないんだけど…。
「床コース…?」
「そうしたいなら止めねぇよ。でも、」
「お前が料理したんだから、最後まで食べとけば。」
そう言ってとんでもなく魅惑的に笑う高杉に、ちょっと呆気に取られてから、遠慮なく飛びついた。