銀高ss「銀さん、今日はあの人と一緒じゃないのね。」
馴染みの店の売り子に通りすがりに声をかけられた。
「あのちょっと怖い雰囲気の人。喋ったことはないけど…。」
ようやく相手にピンと来た。高杉の事か。
「あー、今日はちょっと寝込んでてな。」
「あら、そうなの。じゃあこのプリンとかお土産にどう?喉越しいいわよ。」
さりげなく売り込まれてしまった。あいつ、プリン食うかな。腰痛だから胃腸は元気なはずだし。買い出しにと家を出た時は大分不機嫌そうだったので、これで手を打ってもらおう。
じゃあ、と自分の分も購入して2つのプリンを受け取った。
「ここだけの話だけど、」
娘が耳を貸せ、とジェスチャーしてきたので近づいて耳を傾ける。
「あそこの店の子。銀さんのあの人のこと、気になってるみたいよ。」
「……ふーん。」
「なによ、反応薄いわね。余裕ぶってると横取りされるわよ。」
「余計なお世話だこのヤロー。」
ひらひら手を振って店を後にする。ちょっとー!と声が聞こえたが無視した。
あそこの誰かが高杉を好き。こんな話を聞かされるのはもう何度目だろうか。こういう話題って普通本人に言わないもんじゃねえのか。結局どいつも転ぶ先を楽しんでいるのである。
やだやだと首を振って家路を歩いた。
「遅ェ。」
「はいはいすいませんね。プリン買ってやったから許せ。」
「茶淹れろ。熱いやつ。」
「へーい。」
甘いものが食べたい。半日布団の住人だった高杉は起きるなりそう言った。そしてこの場面でのこの発言はお願いではなく、ほぼ命令に近い。腰痛の原因代表として、ご所望のものを手に入れるべく街へと繰り出したのだった。
買い物ついでに、出先でいらん話まで聞いてしまったのだが。
まあまあ。とやや素直に言って高杉はプリンを平らげた。お気に召したようで何よりです、と返事して自らも同じもを食す。
ふと頭によぎったあの話題。高杉はどんな顔をするだろうか。少し、見てみたくなった。
「高杉のこと、好きな子いるらしいんだけど。」
「……は。」
「嫉妬の一つでもしろって言われたわ。お前の事横取りされるぞ、って。」
「……。」
高杉は目を伏せただけで何も言わなかった。え、もしかして満更でもない…?ここに来て一気に自信がなくなってきた。高杉って、俺のこと好きだよね!?じゃなきゃ××も××××もしないよな!?
「…ねぇ、銀さんたまには愛の言葉の一つでも聞きたいな〜。」
「ああ?」
「いいから言えよォ!銀さんだいすき♡♡って言って!お願い!」
余りに必死過ぎたのだろうか。かなり食い気味になる俺に、高杉はやや引いたような顔をした。嘘ォ!
「何を騒いでんのか知らねェが……。」
「嫌!聞きたくない!!」
「お前が言えって言ったんだろうが。……日頃思ってる事、都度言わねェよ。」
「えっ。」
高杉はぬるくなった茶を啜って、それから何も言わなかった。
ちらりと髪の間から見えた耳たぶは、少し赤い気がした。