京園5.5*
海外にいると日本語が恋しくなる時がある。そういう時こそ本でも読めばいいのかもしれないが、大抵の場合京極は衝動に負けて、携帯電話のメッセージアプリを眺めたり手紙を手に取ってしまう。園子と交わした、学校であった事、自身の近況報告、今度はいつ会えるか、早く会いたいという気持ちの文章。紙での遣り取りは減ったが、以前はその手跡を指でなぞっては思いを募らせていたと懐かしむ。それに伴って、その頃はまだ明確に互いの気持ちを伝え合っておらず、タイムラグのある遣り取りの為に勝手な思い込みや勘違いをしては突飛な行動をしてしまった事もあった、と思い出して京極は一人顔を赤らめた。
気を取り直して、先程着信のあったメッセージを読む。陸上競技記録会、もとい運動会の日が近付いている為にテニス部なのに皆そちらに意識が向いてしまって、ラケットを持つより走り込みや基礎トレばかりやっているという旨の近況報告で、そういえばそんな時期かと彼は目を細めた。きっと彼女の事だから級友達を全力で応援して盛り上げるのだろうと容易に想像出来る。少し、ほんの少しだけ、羨ましいような気がする。
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