ジェ監中年期ジェ監中年期(某お題『傘』より)
大雨だった。
降りしきる音は耳が痛いほど大きい。隣を二本足で立つ黒猫が、ずっと耳を伏せてしかめっ面をあらわに重そうなバックパックを背負っている。
黒猫というには人間とほぼ同じ大きさで、品の良いベストとハーフズボンをはいており、両耳からは蒼白い燐光がほのかに溢れていた。
信号が青に変わり、黒猫よりも少し背の高い少女は、黒猫が濡れないように傘を持ち直して歩調を合わせた。
少女──フロウと、黒猫──グリムはひと言も交わさず信号を渡り終え、小高い丘へ続く一本道へ入った。
舗装されていない道は大雨ですっかりぬかるみ、一歩一歩が重い。フロウは特に制服の革靴のため忌々しく歩を進めた。
1969