Private Lesson 1.25《 それから 》
「じゃあ、そろそろ俺帰るから」
「え、帰れませんよ」
「ん、雨? じゃあ悪いけど傘貸して」
「ではなく」
「?」
「このビル、パパラッチが張ってるんで、出たら今度は師尊が狙われます」
「げえっ!」
「俺もしばらく外に出ていません」
「マジかぁ・・・困ったな」
「 大丈夫です。右隣の部屋はジムになっていますし」
「? ・・・へぇ、さすが」
「 左隣の部屋は2人で住めるようになってますから」
「・・・・・・・・・・・・へ?」
「❤」
─────罠に掛かっていたらしい。
《 ドラムセット 》
「改めて見ても、いいスタジオだなぁ」
「ふふ、ありがとうございます」
「でも、なんでドラムセットが無いんだ?」
「ドラマーを入れる気が無いからです」
「?」
「ここに他の人間を入れるつもりが無いからです」
─────深く聞く勇気が出なかった。
《 えーと 》
(確かに、何でも2人分揃っているこの家の、ベッドだけが1つしか無いのはどういう計算ミスなのか・・・・・・)
「何もミスってませんよ❤」
────────ひぃっ!
───────────────────────
《 超プラベートレッスン 》
自主規制だよ!
放っといてくれよ!
───────────────────────
《 バラード 》
「なぁ冰河」
「はい、なんでしょう」
「そのぉ・・・最近バラード歌う時ずっと瞼を閉じてるけど」
「はい」
「えっとぉ、それ見ようによってはだけど・・・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・キ、キ・・・キスを強請ってるように・・・見える・・・というか」
「強請ってます」
「へ?」
「強請ってます。お願いします」
(え、何? バラード歌うたびキスしなきゃなんないの)
「お願い、します❤」
「────────/////💦」
しなくても何ら問題がないことに後になって気がついた。
《 MYマイク 》
「カタログを取り寄せてみました。俺にはどのマイクが合うと思います?」
「そっかぁ、そろそろ欲しくなってくる時期だよな〜」
「そうなんです。師尊はご自分のマイクは?」
「あるよ〜シュアーのBETA 58A。定番だけど、逆にどこにでもあるから思った通りの音が出せるしね」
「そう仰ってたからスタジオにもソレを用意しました」
「うん、いいね。間違いない」
「ただ、サブマイクで別の物も使ってみたいと思って」
「そっか。ん〜舞台映えするのはやっぱりシュアーのSUPER 55だよな〜」
「あ、ガイコツマイクって言われている物ですね」
「そうそう。あと、音に定評があるのはゼンハイザーの E945。これはハウリングとノイズを防いでクリアな音を出してくれるから扱いやすいと思うんだよね。あと、エレクトロボイスのND86とか。スッと整った綺麗な音が出るって評価が高いんだけど、あ〜でもこれはちょっと女性向けかなぁ・・・って聞いてる?」
「聞いてますよ」
「真面目に聞けよ」
「これ以上無いほど真剣ですが?」
「じゃあ、ちゃんとカタログ見ろよ」
───お、俺の顔ばっか見てないでさぁ・・・/////💦