✒️ 冬に見る朝焼けはあまり気分のいいものではない。空気が澄み、橙色に染まる空は幾万の絵画に劣らない美しさだが、朝焼けは天気が崩れる予兆でもある。限りあるものこそが美しいと言うものの、足を悴む寒さが待っていると分かれば、美しさを称賛する余裕は消えてしまう。
庭へ目線をやれば降り出した雨は知らぬ間に雪へと変わる。空は薄灰色の厚い雲。寒さに手を擦り合わそうとも、お天道様はこちらのことを知らないと言うように姿を見せることはない。今日の朝、空にはため息ができるほどに美しい朝焼けが広がっていた。きっと今日一日は、庭一面の雪化粧を眺める時間になるのだろう。
廊下を渡り、たどり着いた部屋の前で足を止める。はーっと手に息をかけてから床に手をつき、冷え切った廊下に正座をした。
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