プロポーズ大作戦「結婚とか、別に必要なくない?」
凪がいつもの間延びした声で言う。一か月ぶり、二度目のプロポーズに対する返事だった。
「よく分かんないケド、顔合わせ? とか面倒くさいし」
「そういう面倒なことは、全部俺がどうにかするから」
「えー、別に形にこだわらなくてもいいじゃん」
プロポーズといっても、大それた言葉を口にしたわけじゃない。そろそろ結婚を考えるのもアリなんじゃないかって、ただそれだけのことだった。
渡欧して、つまり凪と同棲を始めて七年になる。コイツの性格は誰よりも理解しているつもりだ。だから今までは話題に出すことさえ控えていた。一緒にいられるだけでも満足している。でも俺は敢えて形にこだわりたい。関係性を大っぴらにすることはなくても、お互いが唯一無二であることの証拠がほしい。
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